ライナスの毛布のことを英語でsecurity blanketということを初めて知った。ライナスの毛布という言葉には馴染みがある。よく二次創作のタイトルになっていたので……
何を隠そう私もライナスの毛布的なものは持っていて、それがタオルケットだった。「寝ている時に首を冷やすと風邪を引く」と母親が考えていたので、物心ついた時から首にタオルケットを巻いて寝ていた。物心ついた時からというのはもしかしたら言い過ぎかもしれないけれど、寝る時はいつも首になんかかけてた記憶なので、あながち間違ってはいないはず。成長するにつれて、幼稚園か小学校低学年で使っていた薄手のタオルケットを首に巻くようになった。白地にピンクと茶色でうさぎだかクマだかの動物と花がプリントされていたような気がうっすらある。習慣とは怖いもので、記憶に間違いがなければ、そのタオルケット、大学生になるまで使い続けた。
最終的には寝返りを打つたびにビリッとどこか裂ける音がするし、洗っても洗っても黒ずみが取れないし、ビリビリで模様はもはや判別できないし(なのでなんの動物だったか思い出せない)、タオルケット?ゴミじゃなくて?な状態だった。さすがに親にも、捨てない?と何度も言われた。でも首になにかないと落ち着かず、しかもそのタオルケットでないとだめなのだった。同じ肌ざわりのものはないし、長年使って自分の臭いが染み付いているのが良い(洗濯はもちろんこまめにしていた)。ペットのケージを洗った後や、引越しの時にはそのペットの臭いのついたものを少し残しておくといいと言うが、そんな感じだったのかもしれない。なら布団やまくらや毛布でもいいじゃないかと自分でも思うのだけれど、なぜかタオルケットが首と顔に当たってないとだめだった。旅行先に持っていくことはないし、気にせず眠れるが、自分の家だとなぜか落ち着かない。
大学卒業くらいで、さすがに……と一念発起して捨てた。捨てたら眠れなくなった、ということもなく、これまで首にタオルケットを巻いて寝ていたのが嘘のように何も巻かずに寝て大丈夫になった。思ってたよりあっさりしたものだった。
それでお別れかと思われたが、実家を出るにあたって寝具を新調して、気づいたらまたタオルケットを首に巻く習慣が戻っていた。ニトリで買ったクリーム色の無地のタオルケットで、最初はごわごわしていたけど次第に柔らかくなって身体に馴染み、首にかけて寝るのが落ち着くようになった。寝ない時も顔を埋めて深呼吸することもよくあった。精神年齢なのか精神状態なのかどっちか知らないけど大丈夫だろうかと心配になるが、もう一生こうなんだろうなと思っている。
しかし二代目も最近、劣化によりボロ雑巾に成り果ててしまった。洗っても干しても埃がすごいので、しぶしぶまた新しいタオルケットをニトリで新調してきた。慎重に肌触りのいいものを選んだつもりが、ポリエステルが入っていたようで、さらさらしすぎており、この肌触り……違う!!となっている。なので今現在とても困っている。そういう加工が施されているのか、単に使用期間の問題かわからないが、臭いもいつまでたっても買ってきたばかりのタオルケットの臭いのままで、そこも不満である。
一縷の願いをかけて毎晩使っているが、一向に変化は訪れない。すぐ捨てるわけにもいかないし、早く馴染む日が来てくれと毎晩願いながら眠りについている。