映画ルックバックを観た(演出のネタバレあり)

きぬごし
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漫画で読んで号泣したルックバックが映画化したので、観に行ってきた。評判通り映像化が美しくてすごく良かった。藤野と京本の表情も、出会いのシーンのカメラワークも、動画ならではの動きで臨場感があった。主役2人の声もぴったりだった。山形の自然の風景もきれいだった。あとで言われて知ったが、鳥海山だった。

原作に忠実な映像化ではあるものの、いくつかの改変はあった。担当者と藤野のアシスタントの拘りに関する会話が追加されて、藤野の京本への未練が強調されたり、「この金で経済ぐるぐる回していこうぜ」の台詞が変わっていたり、シャークキックの売上低迷とそれを乗り越えて人気漫画になる様子が描かれていたり。個人的にはアシスタントの会話は好きだったけれど、経済は漫画で印象に残っていた台詞だったので少しさみしかった。掲載順位の推移はチェンソーマンと同じだったりするんだろうか。

漫画で印象的と言えば、連載開始後、バランスボールに座って漫画を描く藤野の後ろ姿だと思う。漫画の最後も、バランスボールに座って漫画を描く後ろ姿で終わる。しかし大人の事情なのか、バランスボールは一切姿を現さなかった。まあラストもバランスボールじゃないんだろうな、と途中から諦めていたが、それ以上に納得いかない終わり方が待っていた。

最後、藤野が席を立ったあと、空席になった机と京本の描いた四コマ漫画のある仕事部屋風景で終わった。後ろ姿で終わらないのである。

個人的にはそこだけ本当に残念だった。漫画と違って、窓の外の風景が朝から夜に変化するのを描いていたのはすごく良かった。まさに映像美。だからこそ、このあと外の四季がどんなに変わっても藤野が漫画描き続けていくのを予期させる、ルックバックのタイトルの象徴たる背中で、原作通り終わって欲しかった。

同じ感想の人をレビューで見掛けなかったので、もしかしたらパンフレットとかには監督の意図が書かれていたのかもしれない。しかし作品の中で汲み取れなかったことを作品外で探すのは違うかなと思って、そのままにしている。

@wry156
食べ物、お酒、山、夢の日記