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ベトナム奇行備忘録 [2] ノンラーとバインミー事件

wtbw
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公開:2026/7/31

ベトナム奇行備忘録 [1] の続き

この旅ではいわゆる観光地にも行ったけど、昼は市場、夜はナイトマーケットを毎日巡った。その土地土地でわりと巨大な市場も夜市もある。混雑して歩くのもままならないところ、閑散としている市場など様々だ。

客引きが激しいところもあるものの、基本的には店前で食事中・近隣の店主とお喋り中・スマホ中(動画鑑賞)、そして寝ている人が多く、個人的には商品を見るより彼らのほうに目がいってしまう。その自由さ、商売っけのなさは憧れだ。わたしもたまに店をやるけど、あんな勇気は1ミクロンもない。

寝ている人は本当に多かった。しっかり横になったり足を伸ばしている。布もの商品をベッドのようにしてダイナミックに寝ている人もいた。自分にできないことをいとも簡単に成し得ている人を崇拝するのは人の常。羨望から尊敬の眼差しで彼らを眺め、己のダサさを呪った。

フエの市場では、菊川さんがノンラー(ベトナムの伝統的な円錐形の笠)を買うべくいろんな店を物色していた。たくさん仕入れて絵付けをし、日本で売るのだと意気込んでいる。とはいえ例の如く、ぼったくり警戒センサーが発動してなかなか決まらない。結局仕入れは諦めたようで、厳選による厳選の結果自分用に2つ購入していた。

携帯にジャマなこと以外は陽射しも避けられるし軽いノンラーは便利だ。土産物にもよく描かれている。実は最初、あの笠ってお土産用かな? と思っていたものの、現地で実際に被っている人はとても多くいまだに活躍しているようだ。ベトナムの街に溶け込んでいる。

購入後の菊川さんは毎朝「今日はどっちにしようかな〜」と嬉々として選んでいたが、隙さえあれば他の人にも被らせようとしては謹んで断られていた。わたしはそれっぽいmont-bellの帽子を被っていたのであまりしつこく言われなかったけれど、何かのタイミングで「こんな時こそノンラーですよ!!!!!」とすごい目力で言われた記憶がある。「とりあえず被ってみてください! 写真撮りましょう! そこに立ってください!」と圧がすごかったので観光列車内で撮った一枚がこちら。

みんな微妙な表情をしているのをお察しください。このあとイスクラさんも単独で被せられていた。

やっぱ買った本人が一番似合ってるね。だけど夜はやっぱりジャマ。

●菊川センサーが発動しなかった事例 その1

そういえば。ハノイの陶器市場で、ノンラーを被った菊川さんに「それ(ノンラー)どこで買った?」と話しかけてきた店のおばちゃんがいた。「いくらだった?」とも続き、価格を聞いて「安い! いい買い物をしたわね〜!」と話している間に次々に近所のおばちゃんお姉さんたちが集まってきて、「あらホント!」「いいわね〜」などホメちぎられて最終的に4人に囲まれていた。

わたしは「こりゃ一致団結した客引きでは……何か買わされる流れでは……」と少し遠目に眺めていたけれど、最後までそんな様子は微塵もなかった。わたしにも菊川女史の警戒心が伝染してきたのかもしれない。

ところが、警戒マスターの権威である菊川さん本人の危機センサーは発動しなかったようで、「すごくいい買物したっぽい〜買ってよかったぁ〜」などと無邪気に喜んでいる。それを見ながら「は? ここで疑わないの!? なんでっ!?」と思ったし言ったと思う。明確な、というか、わたしが納得できる答えはたぶん返ってきていない。

●菊川センサーが発動しなかった事例 その2

ノンラーを被ってエレガントに微笑む菊川氏の写真を見て思い出したが、もう一回だけ警戒スイッチが入らなかったドクターペッパー事件がある。(↑写真左手に持っている)

街を歩いていたら、小さな商店の前で「あ! ドクターペッパーゼロがあるっ!」 と奇声に近い声をあげて冷蔵庫から取り出しそそくさと店の中に入って行った。日本ではまず売ってないので希少価値があるのだという。ところが、出てきてから日本円にして400円も取られていたことが判明。ベトナムの缶ジュースはだいたい50〜150円ということを考えると、見事なまでにぼったくられていた。こともあろうかあの菊川さんに対して、敵ながらあっぱれである。

買物時、イスクラ・菊川両者は瞬時に脳内やスマホ計算機で日本円に換算する。頭も悪いしめんどくさがりのわたしなので2人から「これは安い」「ちょっと高いからやめたほうがいい」と、何度助けられたかわからない。それなのに菊川さんはなぜこの時ばかりは疑ってかからなかったのか。そしてそのあと、いつものようにグチグチ文句を言い続けなかったのか未だに謎である。去年ラオス旅の托鉢時には、「おばちゃんにぼったくられた」と言い張って3日くらい恨み節を聞かされたものだがなんなんだ。なんか理由を言っていたけどよくわからなかった。ペッパーゼロの存在がそんなにうれしかったのか。そいえば一口ももらってない。

●菊川女史によるただならぬ(番外)警戒心 その4

前回お伝えしたように、この旅はバインミーと共にあった。なにしろ20コも食べたのである。イスクラさんがバインミー本を作るということで食べまくったのだけど、菊川さんの協力的な姿勢は、後半からイスクラさん本人を凌駕する勢いがあった。

ベトナムNo. 1で旨いと噂のバインミー屋(ホイアン)に行ったときのこと。確かに観光客で溢れかえり、凄まじい行列ができていた。働いてる人もすごい数だ。1店舗めでオーダーして、対面の店で受け取るシステムになっている。

さてさて、ベトナム1ということは、世界1ということですよ……? などと言いながら一口食べたらややカレー風味だった。「あ、なんか、カレーっぽい味がする。なんだっけ、この香辛料」と言ったら、まだ口にしてなかった菊川さんが「えっ!」と言ってバインミーを急いで頬張った。わたしを鬼のように凝視しながら咀嚼して、「認められませんよっ! これはズルい。カレー味でナンバー1だなんてあり得ない!」とすごい剣幕で捲し立ててきた。いや……わたしに言われましても……。なんつーか、多少スパイスが効いてるかな〜くらいなんだけど、曰く、カレー味でナンバーワンと謳っていいのはインドとネパールだけとのこと。断固認めないと言い張っている。

イスクラさんは菊川さんの激昂ぶりにやや押され気味で、「う、うん……パテがカレー風味だね……」などと言い、わたしはというとバインミーの味の良し悪しはまったくわからないし、面白いので「べつにいいじゃん〜」だのプチ挑発。「だって、うどん日本一がカレーうどんだったら誰も認めないでしょう?」と言い出した時は、実は(まあそうかもね)と思った。

とにかくこの怒りは、旅の最後まで続くのであった。

例のカレーバインミーショップの隣にある商店のおじさん。バイクで隠れているけれど、足元には犬が昼寝をしていた。おだやかな空気が漂い、隣の店の喧騒とは別の次元にあった。

●バインミーに本気出す

「バインミーファンが本を読んだ時に『これはナンバーワンじゃない』とか、『もっと他にいい店がある』とか言われる可能性があるから他の人気店も調べてみましょう!」などと言い出したのも菊川さんだ。そもそも本を作るのはイスクラさんなのだがすさまじい探究心と熱意。このお二方は他の人に対して本当に親切で、わたしだけがまるっきり違う人種のようだった。

ホイアンでもう1件人気の店があるという。菊川さんは「そこのバインミーもカレー味だったらホイアンではカレーテイストがデフォルトということになるので、ナンバーワンを認めてもいい」と自論を展開していた。ところがその人気店はカレー味ではなかったので、結局ナンバーワンが菊川さんに承認されることは永遠にないようだ。

それにしてもあの熱意と好奇心たるや。彼女は早朝4時ごろ起きて1人で朝日を見に行ったり、また別の日には早朝に行われる国旗掲揚式典に行ったりとフットワークがとにかく軽い。その間にもバインミーを買い食いしてイスクラさんのために写真に収めたりしていた。

帰国時、搭乗前にCAさんに「バインミーはありますか?」と訊いていたのも驚きだった。「はあ? まだ食べるんか?」と思ったものの、「イスクラさんならこの角度で撮るはずだから、こう手に持ってください。もうちょい右」などと言われて撮影に協力してご相伴に預かりました。旨かった。もしかしたら1番旨かったかもしれない。

まだまだベトナム備忘録&菊川女史によるただならぬ警戒心シリーズは続きます。

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この日記の一部が日記本になりました。前書きは不穏なのでWEBには載せていませんし続編がかかっていますので全員買ってください! 2025.1 - 2025.6

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