54歳の12月8日から2月3日まで

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せっかくのなので54歳の一年を書いていこうと思う。日記は書かないとこないだ書いたばかりなのだが、まあそんな律儀に考えるようなことでもないだろう。それはともかく一年では字数的に難しいだろうから一ヶ月ごとに記事を区切っていく。そんなわけで 12/8 54歳になった。私が通うクリニックでは誕生日にカーネーションのプレゼントがあって、それを見るとスタッフがみんな「おめでとうございます」と言ってくれるのでどうも面映いがまあたくさんの人に祝われるのはいいことだ。夕飯は好きなものを作ってよいと家人から言われていたがシャケと鶏のクリーム煮という地味なメニューにした。紙魚の手帖の見本届く。書評欄『最後の三角形』が被るのは予想できていたが取り上げるものも同じになるとは……。酉島伝法さんのエッセイがタイトルのカルヴィーノが内容に絶妙に絡んでいてさすがの巧さ。夜だらだら呪術廻戦を二話分見た。釘崎が死んで本当にメインキャラをあっさり殺すなあと感心していたら助かるチャンスがあるらしくてああそうなのかと思った。 12/9 せっかくの誕生日だったのに地味な晩飯だったので今日はとんかつ屋に行ってもよいよと家人が言ったので豊洲の「田」という店にいく。前からちょっと入ってみたかったのだ。美味しかったがちょっとロースは小さめで極上にするべきだったかと軽く後悔した。もうしばらくはとんかつ屋に入ることなんてないだろうになあ。午前中はずっと原稿を書いていたのだがまったくうまく進まない。移動中はずっとLavie TidharのCentral Stationを読んでいる。ガチャガチャした小説。読み終えてから原稿を書くべきかもしれないが半分ほどでシリーズと言ってもあまり関係ないと思って。 12/10 原稿の合間に上田早夕里さんから頂いた『播磨国妖綺譚』の二巻目を読む。知識の扱い方がまったくSF的で、確か筒井康隆だったか、SFというのは物の見方のことだという言葉を思い出す。気持ちがフラフラしているので、本棚で目に止まった倉橋由美子の『ポポイ』をパラパラ読んだりもする。充実した文章で、物語がどうこうというのでなく単に文章を読むだけで小一時間を過ごせる。もっとも、今の状況でそうそう充実してもいられないから途中でやめるのだけれど。原稿はようやく先が見える程度には転がり始めた。まあどうにかなるだろう。 12/11 月曜日はどうも疲れる。というか週末に疲れた分が一気に表に出る感じか。ひさしぶりに会った技師さんが野球ファンだったので大谷すごいねと話を振ったらすごいですよねえ大谷とかだったら生活用品とかいっぱいモニターしてくれってもらえるんでしょうねえ枕とか布団とかと言い出し、いいなあ大谷そういえば天皇陛下もいいですよね地方に巡業行ったりしたら名産のお菓子とか果物とか食べ放題ですよねえ天皇に生まれてきたらいいだろうなあと続けるのでそんな食欲だけで天皇になりたいって人初めて見たわと思ってめっちゃ面白かった。墨田区の図書館へいき、期限が迫った本を返してなんとなく二階に上がり、三浦俊彦の可能世界論とマラブーの『真ん中の部屋』とアガンベンの『散文のイデア』を借りてきた。あまり意味はない。来年はカフカの生誕だか死去だかの何周年だかで、ちょっと日記あたりを読み返したいなあとか思っていたのでアガンベンのカフカ論にちょっと興味が出た。小説を書きたいなあとか思ったので、静かなインターネットでちょっと下書きとか書こうかなとぼんやり思っている。図書館の外に桜が花をつけていて冬だなと思った。 12/12 これも昨日病院で。技師さんが「ファスト・ドクターよんだんですよ」と看護師さんに話しているのを聞いて、『ファスト・ドクター』という漫画かなんか読んだのかと思ったら、子どもが怪我をしたんだけど、四連勤で医者に連れて行けないうちに酷く化膿してしまい困ったなと思ったので往診のドクターを呼んだ、という話だった。なんでもネパール人のドクターが一人できて、治療も包帯巻くのも何から何まで綺麗にやってくれて、すごいなと思ってウェブサイトのプロフィールに無医村とか戦場の医療キャンプとかの経験がある人だった、というので、ああそういう人の話を聞いてみたいなあとか思った。朝から雨。寒いし調子悪いが原稿を書く。どうにかこうにか頭を悩ませながら書く。某所へメール。ああ、年末だなあ。ヌフレツンを読み始めるが、なんでこう伝法さんの作品は主人公が過酷な目に遭ってるのが多いんだろう。辛い思いしながら読む。 12/13 朝、出掛けに確認したら某所からメールが来ていた。昨日の夜九時過ぎに出したものらしい。働きかた改革……とか思った。クリニックへの行き帰りでル=グインを読む。ロマンス場面がなんというかあけすけというか身も蓋もない感じで良い。私はゲド戦記も帰還以後のほうが好きで、ル=グィンの書く男の年寄りのダメさ加減が絶妙に好きらしい。図書館に本を返す。帰宅してからメールの返信と原稿を書く。Apple Musicに羊文学の新譜が出ていたので呪術廻戦の終わりの歌があるかなと思って聴いたら予想外にロックで吃驚した。気持ちのいい音だねと思って一枚前の旧譜を聴くとそれほどでもない感じがする。夜。最近無料漫画のEDENを読んでいるのだが、未来SFなんだが展開が南米のギャングものみたいで殺伐としていて面白い。買わなければならない本があるが近所の本屋には置いておらずネット通販はどうも気が進まないのでまたバス乗って大型書店へ行かなならんかね。創元から『潜水鐘に乗って』の献本。SNSで『星、はるか遠く』も一緒に来たという人がいて私は??となった。 12/14 そういえば今日は赤穂浪士の討ち入りの日か。いや新暦じゃんとか思わないでもないが。どうにか原稿を完成させる。旧作を調べていて昔SFマガジンに掲載された短編の内容が知りたいなと思ってネットで探して苦労しながら英語で読んだら所持しているSFマガジンの中にあった。いやあ翻訳って素晴らしいですよね。どうにか原稿を完成させる(大事なことだから二回書いた)。メールの返信届く。お仕事で必要なPDFをダウンロード。週末はひたすら読む人になるよ! 12/15 書評で取り上げる予定の本のゲラを読む。担当さんが変わってからゲラが送られてくるようになったので創元だけ早く扱う感じになっているのだがまあそういうものかもしれない。献本が次々届く。無事『星、はるかに遠く』も届きました。届くと思っていなかった本まで届き、次の書評どうしようかなあと悩みつつ読む。年末進行というものがあるのだ。クリニックでは体調を崩している人が多いが、新型コロナに感染した人がやはり免疫が弱っているのか何度も熱を出したりお腹を壊したりしている。怖い話。夜は家人が通販で買ったオイシックスという食材サービスの唐揚げを食べる。なかなか、というか同封されていた野菜が全部すごく美味しい。値段が高い食材は美味しいという世界の真実。アマプラで『通信制限』という韓国映画を見る。銀行の支店長が車に爆弾を仕掛けられ、子供と一緒に金を工面しながらいろいろあって警察に追われながら走り続けるサスペンス映画。シンプルな展開で飽きさせないが、警察があまりにもボンクラ揃いでダメすぎるのでちょっと無理があるというか笑ってしまう。しかし韓国の家族愛の絶対性はいつも見てもすごいなあと感心する。 12/16 家人が病院に行くのでついでに丸の内で待ち合わせして昼飯。暖かい日で人出も多くなごやかな休日という感じだった。地下にあるブリティッシュ・パブっぽい店でフィッシュ&チップスとステーキを食べたが、隣の席に怪しい感じの年の差カップルがいて、男が自慢たらしく話しているのに女がいちいちすごーいえーそーなんですかーすごーいと相槌を入れるのでなんだかこんな会話まだやってる人達がいるのかと驚いてしまった。それにしてもあんなすごーいすごーい言われたら自分だったら馬鹿にされているのかと思うところだがやっぱり偉い立場のおっさんは違うなあと違う意味で感心する。八重洲に回ってヤマダ電機で先日壊れたプリンターを買った。駅地下で買ったサンドイッチで晩飯。夜はまたアマプラで韓国映画の『非常宣言』を見た。面白かったがやっぱり韓国でも「大作」は冗長なところが多くてちょいちょい退屈した。 12/17 朝からずっと本を読んでいろいろ考えて過ごす。ネグリが死んだらしい。昔早稲田で池田雄一さんのゼミの読書会をしたことを思い出す。 12/18 思ったよりも体重が増えていなかった。透析中も少し本を読む。オイシックスなかなかよろしい。 12/19 歯医者へ行く。仮歯を作るだけだったのに虫歯が発見されて治療した。きっと痛くなる。しくしく。なんだか年末だからか献本が次々届く。本を読み続ける。同時に何冊も読んでいるので、1日に4冊とか読み終えることに。ハヤカワ新人賞の『ホライズン・ゲート』を読了。設定はものすごく魅力的なのだが、主人公のキャラというか語りがどうにも苦手で困った。選評を読むと、なんと自分は臍曲がりなのだろうかと思い頭を抱える。しかしまあこれが自分なのだから仕方がない。あまりネガティヴな感想は公開では書かないことにしているが、ここはあまり見るものもないので良いだろう。アガンベンをパラパラ読んでいて、例の潜勢力を苦痛うと整理する文章を読み、つい先日読み終えた『奏で手のヌフレツン』を思い出すなど。読んだものをほとんど咀嚼できずに、もうすぐ次、次、となるので、どれだけ忙しくても寄り道の読書は不可欠なのだった。 12/20 病院でも読んだりする。もうちょっとで必要分はどうにか。某社から原稿の依頼。大変ありがたい。急に寒さが強くなったので対応できない。 12/21 猫を医者に連れていく。タクシーの中で大便小便を漏らしまくる。酷。あまりに暴れるので診察不能で、血液検査だけしたけど涎がひどく相当ストレスがかかっているので今直ぐ家に連れて帰れ検査結果は電話でと言われる。帰りのタクシーで検査結果を聞く。腎臓と肝臓の数値が悪くなっているらしい。腎臓の薬はそのままの量で継続、肝臓はサプリをはじめてもいいかもしれないと提案される。さてどうしたものか。もっと水を飲ませなくてはいけないのだがどうしたものか。しかし診察できないくらい暴れるとは。酷。帰宅後は原稿を書く。2枚。案外すんなりはじめられた。家人がサプリを通販で買った。速い。 12/22 今日はまたひときわ寒い。書評原稿を書きながら何度も扱う本を読み返す。いつもよりも読む手間がかかっていないというか時間がないのがなかなか辛い。 12/23 朝から原稿。早起きしただけあってか6枚まで書いた。夜はひさしぶりに居酒屋に行った。行きがけのバスで某仕事のゲラを読む。なんか忙しそうで店員がピリピリしてて居心地が悪かった。飯はそこそこ旨かったが。夜は家人のリクエストで薬屋のひとりごとを見た。しかし家人はすぐ寝てしまって結局一人で見た。 12/24 午前中に初稿完成。ちょっと疲れたので後はだらだらしていた。すぐに某評論原稿を書かなければならないわけだが。割と頭の切り替えができるようになっていて驚く。 12/25 朝、ごはんに混ぜて猫にサプリを食べさせようとしたら完全拒否で困った。どうも匂いが嫌らしい。どうしたものか。バスで某作を読み直し、透析の帰りに図書館に寄っていろいろ資料を漁る。考えることが多い。昨日はだいぶ寒かったが、今日は同じ格好だと暖かいを通り越して暑い。帰宅して猫に食欲増進剤入りのごはんをあげる。サプリはごはんをミキサーにかけるときに混ぜると少し匂いがましになる様子。某社から来年の仕事の確認のメール。いよいよ忙しい。そしていまクリスマスなのにケーキのことを忘れてしまっていたことを思い出す。あらら。必要あってバルトの本をAmazonで調べたら原書だとすごく安いのを発見する、というかこれは前も見たことがあるか。うーむどうするか。 12/26 原稿に戻るためにフィクション論をいくつか読む。いろいろ概念の整理。今日〆切(のはず)の原稿の見直して、送付。ブログも書かなくてはと思ってひさしぶりに開けたら何故か今日だけアクセスが増えていて謎。まあ一日一桁が通常で二桁になったら多いという感じだからあまり気にするようなものではないのだが。次の原稿を書かなくてはいけない。書いては消し、書いては消しの初期段階。同時に資料も読み込む。パレスチナ関連の署名に参加する。言い訳したいがしない。SNSに何も書く気がしない。たまに見ることは見るのだが、どうも遠い感じがしてしまう。 12/27 今年最後の図書館で本を返し借りる。原稿の受領メールと、別件でゲラくる。〆切は来年5日。 12/28 家人が朝はやくから何やらバタバタしていて、聞くと目が腫れて痛いという。会社を休んで目医者へ。私は私で歯医者で、抜いた部分にブリッジを作るので隣の歯を削って三本の仮歯を入れる治療。今回はさすがに麻酔が切れると痛くて集中できない。それでもしみるとかそういうのではなくて、単に強く抑えて削ったので歯茎が腫れている感じ。原稿ができず、仕方がないのでいろいろ読んで過ごす。吉田貴光『文学のエコロジー』をざっと読んだが、どうもそんなすっぱり言っていいのかなあという気になる。クンデラ『小説の技法』を読む。こないだの吉田論の直延長にある議論だった。 12/29 なんかバタバタする。家人の仕事最終日だったので外で飯を食ったのだが、いつも素通りするスペイン料理屋でなかなか美味しく食べ、帰宅して呪術廻戦を見て、それ以上何もする気にならず12時までテレビ見て寝た。クリニックの行き帰りに以来のゲラを読んでいただけで何もしてない。しかしややこしそうな小説だなあ。 12/30 普通に起きて普通に仕事してしかし年末だからかあまり進まず、昼過ぎに買い物に行きたぶん明日も買い物に行くのでなんだかんだ言って今年も買い物ばかりの年末になるらしい。NLQをパラパラ読む。マーク・トウェインはすごいなあと今更ながら感心する。夜、正解は一年後を見ていたら夜中になってしまう。 12/31 少し遅く目覚めたが昼前に買い物を済ます。里芋を煮ながら一年の総括などをぼつぼつ。今年は大雑把にいえば石川淳と倉田タカシ、モダニズムとフィクション論の一年だった。倉田タカシの方は来年に持ち越しだが。最後にセリーヌ『戦争』を読んだ。やはり初期作品でのメルヘン調。冒頭の戦場は一次と二次の違いはあれどシモン『フランドル』と、病院の下りはどうしたってジュネの監獄と比べたくなる。そしてどちらとも形式的な弱さを感じつつ、直接的であることの難しさということを考えずにはいられない。悲しくておかしくて寂しくてくだらない。人間の弱さをとことんさらけ出さずにはいられない優しい物語。夜は紅白。カウントダウンはジルベスターコンサートでチャイコフスキーの五番。ちょっとはみ出した。一秒遅かった。惜しい。 1/1 朝六時起床で弁当と雑煮の下ごしらえと二日酔いという(昨日日本酒二人で一本あけてからまたワインなんか飲んでたから)家人にお粥を作ってクリニックへ。行き帰りは22原稿〆切の作品ゲラを読む。日本酒を2本買って帰宅し、おせちを摘んでいたら日本海で地震。石川が震度7で津波の警報。ちょっと気の毒すぎる。後の番組はすべて報道に変わって、ビデオにとってあったカウントダウンライヴを見て夜中に寝る。 1/2 とりあえず朝洗濯して4日〆切ゲラを終わらせる。なかなか落ち着かない。昼から酒ばっかり飲んでいる。夜、羽田空港で海保の飛行機とジャンボ旅客機が衝突炎上。石川の救援物資を運ぶ飛行機だったらしい。正月早々続くというか二次災害だがまったく気が滅入る。 1/3 クリニックでも災害の話題ばかりで暗い新年になった。風呂場の電球が切れたので有明ガーデンのコジマで買ってきて交換。懸案だった洗面所の電球も明るいのに交換していい気分。夜、コトー先生の映画版を見る。テレビを見ていた人にしかわからないようになっていて軽く驚くというかそういうものかと思ったり。展開の速さにイマイチついていけない。今日は小倉で火事、秋葉原で無差別刺傷事件。不穏な年明けだなあ。 1/4 今日から家人も仕事で平常運転。本当は原稿にすぐ当たらないといけないのだがまず資料読み。『アルチンボルド エキセントリックの肖像』をじっくり読んで、やはりエーコは一度読まねばならないかと。『ベケットの方へ』を読了。マウトナーという哲学者が面白そう。元ネタになっていた論文を発見。アルトーとジュネから演劇の問題につなぐ。言葉への敵意。声の問題。ドゥルーズと潜在性。潜勢力という概念もある。そいて中断していた『散文のイデア』を読み終えた。やはりカフカ論が面白い。バートルビー、あと、やっぱりアリストテレスはきちんと読まないとなあとか思った。『ジャコメッティのアトリエ』を繙く。 1/5 朝、ゲラを送付。暖かくてヤバい。クリニックでガンガン寝てしまい血圧が落ちる。図書館を回って遅く帰宅。何もしてないのに疲れている。夜はご飯を食べてテレビを見ながらダラダラした。 1/6 朝は昨日借りてきたブールヴァルグ『世界の読解可能性』をちょっと読んで原稿を少し書いて昼すぎから下北沢のヴィレヴァンに行く。渋谷で道に迷いかける。大友全集のFireball、SFのイラスト豪華本、ハスミンのゴダール革命増補文庫を買う。満足。野菜蒸しメインの居酒屋で軽く晩飯を食べ、人の多い渋谷でひさしぶりに歩いてみたくなりブラブラするが、後ろから「わたしたちアイドルやってるんです、よろしくお願いします」という声とビラを配っている気配がして、人生いろいろだなとかちょっと感心する。ヒカリエでタイムセールのパンを買って帰宅。ゴダール本をパラパラ読み、相変わらずのハスミン節で気持ち良くなりながら疲れたけど映画のスーパーマリオをダラダラ見て(まあ、面白くはなかった)お菓子食べながらビール飲んで11時過ぎに寝た。 1/7 わりと早く起きたが飯食ってダラダラしてしまう。昼からお台場のヴィレヴァンへ行く。大友全集の銃声、円城塔訳怪談を買う。ラーメン食って有明ガーデンで買い物して帰宅。二日連続で出かけたので疲れた。夕方少しうとうとするが、お腹が空いた猫に起こされて餌やり。昼が味の濃いものをたらふくだったのでほとんどおつまみのような軽い晩ご飯を食べ、ダラダラしながらフリーレンと薬屋のひとりごとを見る。どちらもオープニングが変わっていた。銃声を読み、石森章太郎の影響が強い初期作品を読みながら、大友は努力肌の人だったんだなあとある意味当たり前のことを思う。星新一賞の請求書を作る。エクセルじゃないから罫線が出たまま。 1/8 まだスペースが残っているのでこのまま続ける。祝日なので空いている道をいつもの時間よりも早く駅に着いてしまい、少しだけ駅の中でゲラを読んでクリニックへ。技師さんの奥さんが出産したという話を聞くが、それで浮かぶのが、アンブロース・ビアスの「誕生[birth]人生で出会う災厄のうち最初で最悪のもの」という定義だったので、この話題には触れないでおこうと思う。帰途、身体のケアでよもぎ蒸しに行っていた家人と豊洲で待ち合わせ、買い物して帰る。行き帰りにゲラを読んでいて、少し明るい話になったかと思ったらまた絶望的な話が続いて、なかなか難しいなと思う。人は世界がどれだけ悲惨で溢れているかを知っているので、それを見ないようにしている自分や、大して悲惨ではない自分に罪悪感を抱き、いつかその幸運が崩れるのではないかという不安や恐怖からアポカリプスを想像する、また想像したもの(フィクション)を消費することで、癒されたり安心したいのかもしれないと言ったようなことを考える。夜もなんとなく疲れてしまった。 1/9 洗濯する。朝から原稿と本読み。解説書くための小説原稿を読了。これが第一長編で、資料が少なく調べてすぐに解説を書きはじめるが、まあゆっくり。倉田論も少し。『銃声』を読了。どんどん個性が確立していく過程がすごく面白いというか興味深いが、自作解説が身も蓋もなくて楽しい。『真ん中の部屋』は、短い文章が多くてちょっと読み飛ばしてしまう。前も思ったけど何でもかんでもヘーゲルに結びつけすぎでは、という気がしないではない。ただまあ、それが哲学(史)というものかもしれない。そこで『世界の読解可能性』をまた少し読む。再校来たので原稿で聞きたかったことと合わせてすぐに戻す。すぐ返信が来て了解が取れる。しかし違うやつのゲラは来ないなあ。もしかして見落としだろうか。『boogie-woogie waltz』も読了。実験的な作品が多くて、個々の作品には思い入れがないというコメントが面白かったが、しかしこういうのが雑誌のポツンと載っていたからこそ注目されたんだというのはわかる。家人は残業で遅い。 1/10 セコイア・ナガマツのWHERE WE GO WHEN ALL WE WERE IS GONEを購入。クリニックへの行き帰りで読む。日本が舞台になっていて、ゴジラやろくろ首が登場し、破綻した家族の物語が続く。とにかく暗い。今日も家人は遅く、しかしなかなか仕事に入りづらくどうにか少し本を読むくらいで夜を過ごしてしまう。10時過ぎになってから締め切りがすぎた仕事の連絡があり、明日返信しようと思って寝る。 1/11 朝から言い訳のメールを書く。待っていたゲラが届くが、なんか真っ赤になっていて暗くなる。歯医者。新人のドクターらしく今日は麻酔もそれほど痛くなかったし仮歯の具合もよくやはり前回セメントが残っていたのは間違いだったのだとわかって成長途中なのだなあとか思った。まあでも誰でも最初からベテランではないからね。メールの返信がすぐきた。今月末でも良いとのことありがたいありがたい。先にゲラをやってしまう。結構というか真っ赤なんだから当たり前だが時間がかった。今日は寒くて辛い。ゲラを戻し、ご飯を食べて、猫の餌やったり少しぼうっとしていたらゲラの返信で質問が来て、少し考えて返答を書き、出す前に風呂に入って出て一度見直してから送信する。結局一日ゲラをやっていた……。夜は本を読む。メールの返信が来てオッケーでまとまる。気候変動SFについてのコラムなどを読む。解説は8枚なのであまり多くは盛り込めない。 1/12 WHERE WE GO WHEN ALL WE WERE IS GONE読了。連載のゲラの最終確認と、某新人賞の下読み作品を受領。他のところとはまたスタイルが違っていて面白い。とりあえずリアル知り合いはいない模様で一安心。ネットで知ってる人は、これはもうしかたがない。感情移入しないようにしなくては。 1/13 kitteで寿司を食う。おまかせでちょっと量が足りなかった。丸の内日本橋の丸善でバルトの美術論集を探すが在庫なし。マケプレで買う。バスの中で下読み開始。いかにもジャンダー周りが古臭い作品が最初だった。文章そのものは上手いが、これではダメだろう的な。タクシーで帰宅直前に雨が降り出し、家に入るとすぐに雷が鳴り出す。嵐ですよ。夜、アマプラに新しく入っていたレザボア・ドッグスを見る。懐かしい。よくできた脚本家の映画と思っていたが、その印象は変わらないものの、回想の入れ方の歪さとかちょっと変なのが面白いのだなと思った。後、台詞の面白さは役者にかなり依存するなあとか。なんだか帰宅後はずっと体調が悪かった。仕事がいまいち進まない。 1/14 下読み、次に来たのがこれはちょっと好印象に古いタイプの作品。サイバーパンクがアバンガルドなファンタジーに近いづいたらこうなる系。でもまあ流石に予選は通せないか。有明ガーデンで買い物。靴を買ってもらった。SF大全の気候変動とロビンスンとアンダーズと陳のインタビューを読んだ。前二者は役に立つ。今日も一日調子が悪かった。腰が痛い。急に寒くなったからか。 1/15 新しい靴でクリニックへ。まだちょっと慣れない。下読み、子どもものが二本続く。どちらもよくかけているが、片方はAIロボットものでこじんまりしているけど感動はさせる系、片方は完全なファンタジーでちょっとカテゴリが違う。まあでも全然つまらなくはないので読んでいて疲れない。逆に面白くて疲れるほどではないとも言える。 1/16 朝から洗濯して解説原稿書く。書いて書いて、休憩に大友読んで、書いて、夕方に初稿脱稿9枚。ひさしぶりにちゃんとやった。これで倉田論に集中できる。大友はハイウェイ・スターさよならにっぽんを続けて。この時期の大友の漫画は本当に好きだなあ。 1/17 技師さんに勧めた『地球の果ての温室で』はなかなか評判がよかったので一安心。バルト美術論集届く。読むとやはり面白いので感心する。「動作」の概念の素晴らしさ。こういうものをスッと抜き出すことができるのが優れた非評価だろうと思うと、少々忸怩たる思いもしないではない。 1/18 朝から洗濯。バルト読み切ってマウトナー論文読んでさあ原稿を書かねばと思いつつ日記。ガガッとやって10枚まで。かなり進んだと思うけど、これは作品概要が入っているからなあ。合間にバルトのエッセーを読んだりするが、途中でやっぱちょっと違うかという気にもなる。新=批評的エッセーはいい。買った美術論集も良かった。テクストの出口を買うべきだろうか。ちょっと借りてくるか。 1/19 今日は暖かかった。でも明日は雪とか言ってるだよね。『ちょっと見るだけ』を読む。使うかどうかは微妙だが。しかし現代を映し出すというのは構造の問題だから、それはどんなジャンルの作品でもそうなのではないか、という根本問題があって、批評というよりは研究なんだろうなあとか思った。家人がアニメが見たいというのでいろいろ試してみたがあまり面白いものはなかった。無限の住人のアマプラ版は絵がなかなか良かったが、演出がちょっと大仰すぎるとも。でももうちょっと見てもいいかな。 1/20 倉田論書く。あまり進まず、12枚まで。例によってこんなんでいいのかという気持ちに。昼に買い物に行き、夜はキムチ鍋を食べてアマプラでひさしぶりにカウリスマキコントラクトキラーを見た。とにかく画面が綺麗でああ映画だなあと思う。昔見た時も思ったけど大家の女性が一人になる場面がいい。 1/21 倉田論を書く。15枚までだが、少し虫食い的に進んだので次はちょっと長くかけるのではないかと思う。というか期待している。ヴィトゲンシュタインをいくらか読む。アドの該当本の後記でフーコーとの邂逅と批判が書かれていて非常に面白かった。ジャンケレヴィッチを評価しているのもいかにもフランスの保守的インテリっぽい感じで、いろいろ思うところはある。解説原稿を直して送る。夜、布団に入ってから気になって起き出し修正して送り直す。 1/22 原稿は受領された。耳をまた傷つけてしまう。帰宅してから少し原稿を書く。といっても16枚まで。あと参考文献を書き出す。今回は細かい注釈はつけず、参考文献を付すスタイルにする。いわゆる批評的エッセーだが、日本の文芸批評の伝統ではこれも「評論」の範疇に入るはず。夜、眠れずに悶々と原稿について考える。結論部分がどうしてもうまくはまらない気がしてぐずぐず。 1/23 眠い。原稿を書きながら他のこともあれこれ。洗濯とか猫の餌やりご機嫌とりとかとだに薬の予約を入れたりとか。しかしなかなか遅々として進まず、22枚まで。しかしどうにか結論までの道筋はいくらか見えてきたように思う。とにかく初稿脱稿までは書き進めなければならない。 1/24 行き帰りのバスで新人賞原稿を読む。これまでちょっとびっくりするくらい出来のいい作品ばかりなので軽くビビっていたが、ここに来て連続でボンクラなのがきて逆に安心する。とだでお薬をもらう。相談したいことがあったが、ちょっと忙しそうだったので今日は遠慮する。某Iさんから文庫解説の依頼。続くときは続くなあ。倉田論を少し。形式を終わって、物語の前に「象徴」のパートを作った。悩む悩む。いまさらなんだが。ずっと原稿を試行錯誤しながら書いているので夜はなんだか軽い漫画ばかり読んでいる。EDEN面白い。こういうやり方があるかという。山田宗樹なんかはこういう感じにしたいと思ってできていないんだろうなあと。でもある程度受けているので、これはやりようがあるかもと俄然ワクワクする。プロット考えようかなあ。 1/25 歯医者。先日とった型で作ったブリッジが実際はめてみると隙間ができたのでやり直したいと言われ、また次回ということに。なーんやそれ。帰ってくると猫が薬の影響かやたらかまってきてうるさくなかなか集中できない。とはいえ書いていき、ようやく後半に入ったが、なんと引用するはずの小説の肝心な部分を忘れていて読み直さねばならず、いろいろと回り道をして倉田論26枚(参考文献を足せば28)。ちょっとこれはまずいのではないか。もうまともに書けるのは土日と火曜しかないぞ。解説以来の作品ゲラを受領。二月九日に再校が出るらしい。それまでにはちょっと進めないだろうなあ。とにかく読むものを読んではじめねば。伴名練、ラファティ、高野史緒、ドイッチュを読み直す。少し見通しは良くなったが、ますます日程が難しくなったと感じる。 1/26 寒すぎて原稿がまったく進まなかった。岡和田さんから上田俊樹詩文集献本。これは買うつもりだったのでとても嬉しい。近代日本文学の抜刷も。精力的だなあ。一本の評論に二ヶ月もかかっている私とはえらい違いだ。バルト『テクストの出口』読む。これは本当にいいエッセイ。やはり買うべきか悩む。夜、カウリスマキの『真夜中の虹』を見る。いつものようにあっさりした展開。ダメ人間を肯定しているという歌人の批判があったが、私はカウリスマキを見ていると人間の幸不幸はサイコロを振った時に出る目のようなもの、という気がする。ただ生きることだけがある世界。 1/27 朝早く起きて原稿だが、その前にドイッチュを再読。30枚。「なめらかな世界と、その敵」の分析に、というかその時に使う多世界解釈(量子論)にてこずった。夜、豊洲のドイツビールの店で飲み、ノジマで冷蔵庫を買う。全然考えてなかったが家人がこれが良いというのでどうせ買い換えなければならない時期だったしまあいいかという感じ。本屋で東京都同情塔をチラ見するが文章がダメだった。思いついていろいろ芥川賞候補をパラパラ見て回ったがどれも文章が薄い。これはちょっとどういうことだろうか。古典の読書がないからかと思い当たるが、それが正解かどうかはわからない。帰宅してXでアマプラにあると知り高橋洋の『霊的ポルシェビキ』を見た。ほとんど松本人志のコントのようだった。笑いと恐怖の接点をぐいぐい攻めてくる感じで、全体の印象は歪なのだがオーソドックスなホラー表現も見ていて気持ちがいいくらいシンプルで、ちょっと他にない面白さだった。もっともラストはちょっと強引すぎる気がしたが。 1/28 朝早く起きて原稿。『グラーフ・ツェッペリン』の分析に、最後のパートのまずブランキの引用と『火星のザッカーバーグ』のシンクロ、ベケットに入ったところまでで37(40)枚。 1/29 ベケットはカットすることにした。のだが、まだ迷っている。メランコリーについて。創造行為とは死への抵抗であると、一度しかない人生への抗議と。台所の蛍光灯の紐がちぎれてしまった。また面倒くさい。冷蔵庫が来るのでいまあるものを整理しなくてはいけない。38枚。原稿は40枚に届かないかも。まずい。これは大変まずい。連載の担当からメール。次回もいろいろぶっこむみたい。これはブログでの説明がいるだろうなあ。やれやれ。 1/30 JKKに電話して蛍光灯の紐とサッシの修繕依頼。前者は自費だそうで、業者を紹介してもらったのですぐに連絡して木曜日にやってもらえることに。後者は向こうの連絡待ちで夕方に来たので火木でお願いする。夜20時に電話がきたが取れず、留守電が入っててまだ連絡するとあったのでそのまま。倉田論本文40枚参考文献3枚で脱稿。メールで送付する。創元からweb転載の件でメールこれはすぐに返信。ちょっと疲れた。 1/31 電話がこない。ので電話したら普通で、そしたらすぐに折り返しできた。それで結局明日サッシの修繕もしてもらうことに。というか先に見積もりではという気もするが、まあやってもらえるなら早いほうがいいか。いろいろと疲れてしまって次に取り掛かる気力が湧かない。とは言え連次号のラインナップ打ち合わせとかはやっている。 2/1 二月になったじゃないか! ともかく朝から部屋の片付け掃除。電話連絡なしにいきなり電気屋さんがきて紐だけの取り付けだから5500円。ラッキー。午後はサッシ。本を片付けて窓とサッシを拭いてベランダを掃除するだけでどっさり疲れた。二時までにやはり電話なしで来る。こっちはお金がかからなかった。ラッキー2。元に戻し、すでに筋肉痛が起こりはじめている。もう今日はダメだ……。まあひさびさにがっつり掃除できたからよかったと言えばよかった。 2/2 バスでボルヘス『シェイクスピアの記憶』を読んだ。表題作は初訳だそうでもちろんはじめて読むのだがボルヘスの本は基本的にどれも同じなのではじめてもへったくれもない感じがする。分身、混沌、永遠、同一性への懐疑、といつもの通りのボルヘス。やや淡白な後期作品という意味でも意外性はない。ただまあやはり読んでいて和むのはわたしの加齢のせいだろう。ゲラが届き、意外に直すところが多く参った。まあ表現の滑らかさと情報の正確さ。英語の資料をもっときちんと読まなければならないとか。 2/3 冷蔵庫届く。朝からいろいろ大移動と掃除して疲れたが昼からいろいろ買い物のために豊洲へ行き、肉を食べてララポとビバと文化堂で買い物して帰る