入籍前にペアローンで家を買い、入籍後にはハネムーンにも行ったが、結婚式はしないまま、入籍から1年以上が経過した。妻は「数時間のために百万円単位の費用を要したりそれを御祝儀として回収したりするのを自分がわざわざやる気にはならない」「他人を呼びたてて自分の晴れ姿を見せびらかしたいとも思えない」といったスタンスだったし、私も結婚式への強いWILLはなく「祝ってほしい友だちにはわざわざ結婚式でなくてもそれぞれ祝ってもらえればいいや」程度の気持ちだったし、両家ともに無理に式を挙げてほしそうな感じもなかったから、結婚式は"やらない"方針でここまできた(※正確には、「一応は見た上で決めよう」ということで1度はいくつかの式場を下見に行き見積ももらったが、必要経費の金額感の大きさやブライダル系特有?のふわっとした雰囲気に改めて気疲れしたので、やっぱりやめることにした)。
とはいえ別に、夫婦両名ともに想い出づくりにお金を使うこと自体に否定的なわけではなかったし、子育ても始まっていないので心の余裕もある。私には「今しかできないことはちゃんと今やっておきたい」的なポリシーはあったので、いわゆるフォトウェディングを提案した。妻はたぶん私が言い出さなければやる気にならなかっただろうけど、賛同いただくことができた。入籍1年超といえど、新婚さんいらっしゃいも入籍3年まで出られるのだからセーフやろということになった。
入籍からちょうど1年経った11月のある日、ネットでさらっと口コミを調べて、そこそこいい感じのスタジオに行ってみて、ざっくりとご相談をした。何も制約条件がないと決めていくのが難しいが、私の趣味もあり「歴史的建造物でのロケーション撮影」ということで希望を出した。東京国立博物館では撮影可能だがスケジュールがかなり先になりそう、他に可能なところでは旧岩崎邸や旧古河邸といった選択肢もある……といったラインナップも含めて提案いただいた中で、「適度に世間一般から逸脱していてオモロい」といった観点も考慮して、国立科学博物館(科博)で撮影することに決めた。科博の日本館は国指定重要文化財であり、もう1つの地球館にはティラノサウルス・トリケラトプス等の恐竜がいる。
年明け最初の土日に衣装合わせが実施された。いくつかピックアップして試着し、わりと即断即決に近い形で衣装を決定した。会場の雰囲気に合わせてクラシカルな印象を意識した衣装選びがなされ、新郎:白タキシード、新婦:白ドレス(いずれも、完全ホワイトではなくアイボリーな色合い)ということになった。
次の日曜日に、ロケハンということで一般入館者として科博を訪問した。一通り見て回り、館内展示を楽しむとともに、写真映えしそうなスポットをピックアップできた。インパクトのある展示物や体験型の展示物が多い印象があった。個人的な趣向としては、自然史系よりも技術史系の展示の方がおもしろかったかもしれない。昼食で館内レストランに行くと、子ども連れを中心に相応に混雑していたけども、システマチックに効率よく客をさばいており(適切なタイミングで順番待ちするのが重要)、期間限定の牛タンシチューを美味しく頂くことができた。
1点重要事項として、科博には忠犬ハチ公の剥製が展示されているのだが、グッズとしてハチ公のぬいぐるみも販売されていたため、撮影時の持込アイテムとして購入した(※妻は極度の犬好きのため)。
ロケハンの成果もあり、撮影したいスポット・シーンのイメージをある程度は具体化でき、事前に希望を資料化・先方へ送付した上で、当日の撮影に臨んだ。閉館後17時からの撮影に備えて、14時前にはスタジオに行き、まずはヘアメイクからスタートした。妻ががっつりヘアメイクされていき、私自身もそこそこにお手入れがなされて、きれいに仕上がった。
衣装も着用し、タクシーに乗り現地へ向かい、17時の閉館まで待機。閉館時間になったところで、通用口から入館。といってもまだ追い出し中で、ゴリゴリのタキシード・ドレス姿で一般入場者とすれ違うことになったのはちょっと面白かった。ここまで急いで入場しているのは、我々が撮影を許された制限時間が1時間しかなく、撮影時間を少しでも稼ぐ必要があったからだ。
まず初めに、地球館のB1Fでティラノサウルス・トリケラトプスに挟まれる形で撮影した。恐竜さんに遙かなる時を超えて我々の結婚を祝っていただくことができた。カメラマンさんの的確な位置取り・ポージング指示のもと、スムーズに撮影が行われた。スタッフの方にベールを投げていただきふんわり落ちてくるのを撮影するやつもやった。つい先日に一般来場者として訪問した場所を貸し切って撮影するのは、独特の感慨があって楽しかった。
次に、日本館へ移動し、中央階段や南翼階段での撮影を行った。昭和初期の1931年、関東大震災からの復興も兼ねて建てられた日本館は、アーチや柱飾り、ステンドグラスなど、意匠に凝った造りが残されている。これを独占できるのはテンションが上がるというもので、階段の段差もうまく活かしながら、引き続き楽しく撮影させていただいた。先述のハチぬいにもご活躍いただいた(なお、実際にハチ公が展示されているのも日本館)。かわいいねえ。
最後に、中央ホールも使わせていただき、ドームの吹き抜け・意匠が施されたタイル張りの床も贅沢に使って撮影させていただくことができた。実は当初は希望を出せていなかったが運よく使わせていただけたもので、感謝することしきり。ここで撮れたのが一番うれしかったなあ。
カメラマンさんのタイムキープがほぼ完璧で、ここまでで1時間ジャスト。大変満足して現地を後にした。スタジオに戻り、普段着に着替えて、今日は解散。ぼちぼちおなかも空いたので、妻の希望により帰り道のファミマでファミチキを食べたのち、池袋東武の地下の魚力寿司のお世話になった。ファミチキもうまかったが、お寿司もおいしいね。品質とお値段のバランスがよくてよかった。
写真のデータが届くのは後日とのことで、楽しみに待とうと思う(1枚だけ先出しでデータをもらったが、とてもいい感じだった)。受け取った後にどうするかは全く決めていないが、それこそアルバムでも作って形に残そうかしら。ハネムーン時に撮ったものと併せてアルバム化してもよいのかもしれない。せっかくなので、実家や祖父母にも何かしら作って送ってあげようと思っている(挙式をしなかった分ということで)。こうして想い出を少しずつ形にしておくことが、親・家族孝行になればと思うとともに、今後の人生を生きていく中で心の支えのひとつになっていけばよいと思っている。