『コロッケ1(ワン) 潰して揚げる コロッケ2(ツー)』 小鳥遊過 宗一一郎
私にはこれ、悲しい歌に聞こえるんですよね。思うに、コロッケ1つが2つになりましたという歌ではない。
ここで出てくる数字は、RPGで同じ敵が出てきた時のスライムA、スライムBのような……存在を区別するための記号としてしか機能しないもののように見える。
存在Aを潰し、また揚げる。そうして存在Aは失われ存在Bになる。無感動に詠まれるこの歌は、コロッケ2でさえ代替可能な存在であることを暗喩している。
潰して揚げる、の暴力性にも注目したい。ただそこに在っただけのコロッケは、第三者により潰され、揚げられる。まるで精神を磨耗する社会人のようだ。そして彼のいた場所には、ただ識別番号が違うだけの存在が補充される。人材を使い捨てにする社会を揶揄するかのようだ。
題材のコロッケからして、主婦か、コンビニやスーパーのバイトかだろう。それ以外で取り扱われることは少ないだろうから。そんな状態で、コロッケを潰して揚げなおすことを考えている。精神的にも追い詰められていることが想像できる。きっと乾いた笑いを浮かべながら、そんな妄想を実行もできずコロッケ3、コロッケ4を生産していくのだろう。その自らに似た境遇の、変えの効く存在として、コロッケを。