まー変わったわけですよ、インターネットって。その昔はインターネットやってるやつなんて全員友達が少なそうなヒョロガリかデブかでくらーい部屋の中でモニタの光をメガネに反射させながらカタカタキーボード打ってどこかの誰かを論破しているような、そんなイメージの場所だったわけで。
私の知る限り、知る限りの話ね。節目が3つあった。ひとつは電車男。ひとつはTwitter。もひとつはTwitterがFacebookに負けた瞬間。
電車男って知ってますか? まぁいまやありがちな創作SSですよ。コミュ障が匿名掲示板で助けを求めてなんとなく上手くいくラブストーリー。電車キタ――(゚∀゚)――!!ですよ。
あのドラマはまぁ、確かにスレ住人とのいい知れぬ連帯感みたいなものはよく出来ていたと思う。それでも私に違和感があったのは、実写ドラマで、みんなに顔と名前があったことだと思う。
在りし日のインターネットの主戦場には、顔も名前もなかった。あるのは毎日変わる乱数のIDだけ。コテハンはあったけど全体で見れば少数派だし、主張の強い奴が多く煙たがられることの方が多かったイメージ。
今のSNSは、やっぱりIDとアイコンとスクリーンネームと……で匿名であるにしろ、個性の独立した個人であると認識されやすいと思う。
匿名掲示板にはそういうのが一切なかった。気の合うやつを見つけたとしても、明日にはIDが変わって追えなくなる。でもそういうもんだった。私はそんな刹那さが好きだったし、よい孤独感だったと思う。
電車男から様々な人が増えた。世に匿名掲示板の存在が知れ渡り、住人が増えた。様々なぶつかり合いが増え、毎日退屈しなくなった。
そのうち携帯電話が普及し始めて、パケホの時代が来る。そんな時に、mixiが日本に蔓延するんだ。招待制で携帯電話の認証必須。顔と名前のある大規模コミュニケーションサイト。コミュニティ、あしあと帳、マイミク、公開範囲を決められる日記……交流はメールからmixiの時代へ。MobageとかGREEとかもこの時期だよね。
で、Twitterが来る。黒船だ。08年がITギークたち、09年がオタクたちが一気に増え始めた年だと認識している。相互監視SNSに疲れたユーザーたちがワッと移動した。バズるなんて言葉もなく、バズツイートを連発するユーザーはアルファツイッタラーと呼ばれていた。
mixiもTwitterもだが、SNSが出てきてから大きく世界が変わった。個人サイト+匿名掲示板の時代にはなかった多人数との交友や気の合う友人を探しやすくなった。
そして、インターネットへの参加のハードルが下がったのもあり、だんだんと現実が侵食してきた。
そうして2011年とか13年とかにTwitterはFacebookに敗北する。実名SNSの時代だ。もはや本名を出すことを厭わず、なんなら匿名で意見するなんて卑怯だと言われるほどの世界になった。この瞬間、インターネットは完全に現実と一続きになった。静かで孤独で、それでも刹那の交流はできる私の愛した公園はビジネスマンの行き交うビルになってしまった。「華麗なる公式」が出て来始めたのもこの辺りだったというのもそれを象徴している。
それからはまぁ、もう、知っての通りだ。あんまり変わったイメージはない。onionサイトで根暗にやっている奴らを除けばもうどこも同じように現実だと思う。
ただひとつ、傾向としてあるように見られるのは、賢い若者ほど主城をクローズドな場所に移しているイメージがある。かつてはTeamSpeak3、今だとdiscordやLINEグループなど。不特定多数から見られない場所へ交流の場を移している。
ね、個人サイトのCGI掲示板でやっていたころの規模に戻っていく。あれくらいでいいんだ。
みんな、顔と名前を捨てよう。現実の代用なら現実でいいんだ。
潜ろう。深く深く、誰にも見つからない場所まで。