詐欺師

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 私の文章をわざわざ読みにきてくれる人に対してこんなこというもんじゃないとは思うけど、不思議だとは思う。どこかに書いた告知を出すわけじゃない。バズるような題材を取り扱うわけでも、わかりやすい文章を書くわけでもない。言ってしまえば露悪的なほうだと思う。

 自覚もある。私はなぜ文章を書くのか。

 サトシの声優といえば誰にでも伝わるだろう、松本梨香さんがエッセイ集を出した。「読んで寂しくなくなってほしい」という祈りがこもっているらしい。

 すごいと思う。私と正反対だ。私は誰かの忘れてしまった悲しい、寂しいを思い出させるために書いているんだから。

 

 私は苦しませるために文章を書く。ちゃんと言葉を選ぶし、ターゲットを定めて、その対象にだけは届くように精一杯努力をする。

 その対象とは多くの場合、未来の自分なんだけども。

 ともあれ、こういうことをやっていると、そういうものに共感した人たちが集まってきてくれる。ネトゲとかSNSとかだとね。

 それで私は人を集めようと思ったわけでもなし、コミュニティを大きくしたいわけでもなし、大抵は小さなグループのまま付かず離れずの距離でやって行くことが多いんだけど、その姿が宗教的であると何度も言われた。少なくとも3回は言われた。

 

 それで、私を知る人はこいつは詐欺師であると喧伝することがある。言葉巧みに人を騙すが、こいつはそんなにいいやつではないと。

 いいやつでないのは確かだけど、騙すつもりはないんです。ここまでで示した通り、私は私のために行動しているだけで、決して素敵なことじゃない。

 文章を読んでくれる人たちがいるのは嬉しいことだと思うけど、私自身を誤解されたくないとも思うから、今回こんな記事を書いています。ここには隣に立って私を詐欺師と呼ぶ人がいないからね。

 

 可能であれば、詐欺じゃなくて手品をやりたいな。なにもかもを煙に撒きたい。人を騙すという点では一緒か。

@xa
副作用は夢を見ること