入院レポ③睡眠奮闘記

xrg3
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昔からどこでもいくらでも眠ることができる、というのが自分の長所であり短所だった。手術後にあった変化で特に大きく、かつ退院後の今でも影響が出ている睡眠についての話をしようと思う。

病院の枕は私が苦手な中サイズのビーズが入った枕で、最初はこんな枕で眠れるのかという不安もあった。とはいえ全て杞憂で、昼寝もするし夜もしっかり眠れるのは普段と全く変わらず、手術前の私はただ食べて寝るだけの暇人でしかなかった。レンタルしたパジャマ姿でカフェにいるのも落ち着かなかったので、ベッドでスマホを触ったり寝たりすることしかできなかった。しかし手術後は傷口の痛みから来る頭痛が数日続き、起きている時は気にならないのにいざ寝ようとすると痛みが気になって眠れないことが多かった。痛み止めを貰ってもなかなか入眠できず、そもそも眠れないということが今までの人生でほとんどなかったこともあり、入眠するまでにかかる時間が10分以内を記録し続けている自分が眠れなくなることなんて考えもしなかった。

眠れなくなると、途端に気になることが増えた。他の患者さんのいびきや痛みに呻く声、誰かがトイレに行く音、夜中でも働き続ける看護師さんたちの靴音。点滴の取り替えで誰かが来ればすぐに気づいた。肌が痒くなっていた人が夜中にボリボリと肌を掻きむしっていた時は心配にもなったし、夜間は救急車の音もよく聞こえた。雪の日でも快適な病室の気温は自宅よりはるかに過ごしやすかったのに、何日か眠れない日が続いた。気になり出すと手術前は問題なく眠れていた枕も、ビーズが空いた隙間に流れていくカサカサという音が虫の足音に聴こえて飛び起きたりもした。傷口が枕に当たらないように、かつ寝やすい姿勢はないかを探し続けていたら明け方になっていたりもした。それは退院後も続き、実家に帰ってもなかなか眠れず、眠れないと起きていてしまうことも初めて知った。体力が落ちていたこともあって実家に帰るだけでも疲れきっていたのに、母親に少し寝なさいと言われても結局ほとんど眠れなかった。自分の部屋に戻って元の生活を取り戻そうとしている今、いくらでも寝てしまうということがなくなった。春一番の風の音が気になったり、眠れないと余計なことを考えてしまってまた眠るのが遅くなったり。なんとなく、ずっとぐっすりと眠れていないような、不思議な日々を送っている。無職で身体が疲れていないからというのも理由として挙げられるかもしれない。

これで分かったことは、私が気に入って使っていた睡眠アプリの入眠時間はデタラメだったということだ。いつも8分程度で寝ていたらしい私が1時間以上眠れなかった日の朝、確認したら10分になっていた。あのアプリは使用者が眠ったタイミングを何で判断しているんだろう。謎だ。

@xrg3
好きなことときらいなこと、まるめた自分