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まず、ごめんなさい。何から書き始めたらよいものかと十数分悩んで、真っ先に出てくるものは謝罪の言葉しかなかった。「次は早く帰すよ」などと言っておきながら遅くまで引き留めて、挙句歳下の男の子に無理強いをして。焚き付けたあなたも悪いが、今回ばかりはわたしに九割九分の責任がある。
今日はそんなつもりではなかったのだ。あなたと昼食が食べれなくなったものの、気にせず平然と生きていた。カラオケに着いてからだって、「我慢するから」と言っていたあなたに免じて私からは何もしないでいたつもりだ。肩を寄せあってあなたの柔らかな髪を撫でて、満足だったはず。それなのに。
開き直って言おう、あなたが可愛すぎたのが良くなかった。「逆にする?」という提案に半ばおふざけで頷き、覆い被さったところまでは平気だった。下側のとき息が苦しくなることはこないだの経験から知っていたので、ちょっとした悪戯心から唇を塞いだだけだった。でも、きみが煽るから。端々から漏れる甘い声が聞こえたとき、わたしが今まで我慢していたものが音を立てて崩れたのが分かった。あの、ほんとうに、それが駄目だったのだ。元々はおふざけの延長みたいなつもりだったのに。普段は生意気で賢く生きているようなあなたの、弱々しい吐息とか声とか、すべてが私の頭をおかしくさせた。流石にあまりにもかわいくて、かわいくて。わたしが途中何度も自分を律して耐えていたことを、きみは知らないのだろう。あなたは、あなたが思っている以上にかわいいんだ。どこの誰かは知らないけれど、女の子に言われたことだってあるんでしょう? 罪悪感と背徳感でいっぱいになりながら、巷の恋人たちはこういうとき如何にして理性を保っているのだろうと苦悩した。わたしの中で新たな扉が開いてしまいそうだったのを、必死で押さえつけていた。
普段後輩という立場を存分に利用しているきみの代わりに、今日はわたしが先輩としての立場に胡座をかいていた。あなたの「何でもしていい」という言葉を額面通り受け取ってしまって、今になって自責の念が募る。ああもう、ほんとうにごめんなさい。次は自制するから、絶対にわたしから手を出したりはしないから。あなたに嫌われていないか心配だ。心から気がかりだ。危機感のない恋人に対して大人の対応をすることが、わたしの仕事だと思っていたのに。
あなたと一緒にいると、どんどん弱いわたしが顔を見せてくる。早く会いたい、旅行に行きたい。明日からはまた背筋を伸ばして、恥じない生き方をする。あなたのことを大切にするから。カラオケの奢り代だけではまったく足りないだろうから、あなたの言うことを幾らでも聞くことにします。だから今日だけは、許しちゃくれないだろうか。