愛及屋烏

xx_7
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まだ心臓がどくどく鳴っている。TwitterのTLを滑らせて気を紛らわそうとするんだけど、何かの通知が来る度にきみからのものと勘違いして心臓が跳ねる。ほんとうに、こんなことをする筈じゃなかったのにとずっとずっと思いながら、足をばたつかせながらこの日記を書いている。纏まらない。

気を紛らわせるために、今日の始まりのことから書きたい。きみに見せるために可愛い髪型を作っていたらもう2限が始まっていて、別にどうでも良いかと思ってのんびり支度をしていたら30分も遅れていた。「せっかく起こしたのに」と咎めるきみの言葉はごもっともで、少しだけ反省しながらマーケティングⅡの授業を受けた。明らかに寝不足で、ほとんど異言語の教授の言葉を右から左に受け流していたらスライドが最後まで到達した。やっときみに会える。

お昼、久々に会ったきみは変わらず可愛くて嬉しくなった。初めてのカフェ坂、阪大坂を一緒に降りる時間までもうれしくて、袖を引っ張りたくなってしまうのを必死に堪えながら隣を歩く。きみは理性がしっかりしているからこんな所で甘えたら怒られるだろうなと思って、やり場のない両手で傘を持った。

頼んだナポリタンに人参が入っていて、でもバレたら呆れられてしまうかなと思って、意を決して口に運ぶ。悟られないように食べていたらきみが気づいて交換までしてくれて、なんだか心が温かくなった。きみは優しすぎるところがあると思う。

時間が余ったからよく分からない自習スペースみたいなところでお喋りをした。ジャンプ杯がどうとか、世界遺産検定がどうとか。きみが眠そうに机に伏したのが可愛くて、写真を撮りかけて自制する。代わりに、はみ出た指先を軽く撫でていたらいきなり手を取られて、本当にびっくりした。きみは私のせいだと言ったけど、いやいや、流石にきみが積極的すぎる。

4限終わり。部室でだらだらと喋っていたら服の話題になった。夏服ないですよね、困るよなあ、半袖は着たくないかも、ほら今も長袖だし、指出てないですもんね。そんなことを話しながら、きみが萌え袖をしたら間違いなく可愛いんだろうなと考えた。きみ以外の萌え袖に、別に大して惹かれたこともないのに。

きみの用事が早く終わって、少し早めに梅田に行くことになった。正直なところあのときは本当に眠くて、まともな会話ができるか不安だった。大あくびしたら失礼だよなとか、電車で眠りこけたらどうしようとか。一応コーヒー牛乳を飲んできたけど、やっぱりブラックにすればよかったかな? そんなことを考えながら梅田へ向かう。

服を受け取って、GUの中を通るときピンク色のシャツが掛けられているのを見て、きみに似合いそうだなと思った。言い出す機会がなかったから心の内にしまっておいた。そのあとは星乃珈琲店に向かった。いつも通り迷いに迷ったわたしに呆れもせず、きみは道を先導してくれる。フレンチトーストは今日もおいしかった。同期から「付き合い始めた?」と聞かれたときは流石にヒヤッとした。

こんな雷雨の中家まで送ってくれるきみは流石に優しすぎやしないだろうかと思いながら、繋がれた手をぎゅっと握り返す。今日はきみが驚くほど甘えん坊で、本当にお互いダメな日が交互にやってくるんだなあ、とどこか他人事のようにおかしく思った。

きみがえらく積極的で、射抜くように見つめてきて、私はきっと変な顔をしながら必死で目を逸らしていた。きみは理性がなんだと言っていたけれど、わたしの方こそ、これ以上見つめていたらおかしくなりそうだった。今日はそこまで寂しくなかったのに、こんな好きな予定じゃなかったのに。首元に顔をうずめていたら「未遂」になってしまって、もう一度目が合って、勢いよく逸らした。このとき動揺でめちゃくちゃ声が震えていた気がする。わたしは先輩なのに、自分からは絶対にしないと決めていたはずなのに、なにを。

でもここからはきみが悪かったと思ってる。もう恥ずかしくて文字にすることもできないけど、ああ今日の唇荒れてるのに、こんな予定ならもっと入念にリップクリーム塗ってたのに、なんて馬鹿みたいなことを考えては頭がぐるぐるした。今日はわたしが甘えたな君の面倒を見る番だと思っていたのに、ほんとうにダメなとこばかり晒した気がする。今も心臓がばくばくしている。雨に少し降られたんだから早く風呂に入らなきゃいけないのに、指ばかり流暢に喋る。流石に心の内すべてを書き出したもんだから長くなりすぎた。助けてください。あなたのせいだと思っています。