「IoTの知識地図――設計・実装・運用のための必須知識をこれ一冊で」を読んだ

y_uuu
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本書は株式会社ソラコムのみなさまが書いた1冊とのことで、IoTクラウドエンジニアとして働く自分にとって「必読書」の予感がしたので、すぐに予約した。

その予感は的中していて、読み終わった今「IoTプロジェクトに関わる人は必読」だと思っている。今一緒に働くチームメンバーにはぜひ読んでほしいし、できれば本書を読んで感想を共有する輪読会を企画したい。場合によっては、今IoTのプロジェクトでご一緒しているお客様にもオススメしたい一冊である。

以下、良かった点をまとめる。

ITの総合格闘技である「IoT」の構成要素を網羅的に学べる

IoTを構成する技術要素は非常に多い。大きなカテゴライズとして「クラウド」「通信」「デバイス」から始まり、一口に「デバイス」といってもそれは「回路」「組込みソフト」「機械」といった異なる分野の専門知識の集合体で構成されている。

一方でIoTプロジェクトにおいて、必ずしもそれぞれの分野の専門家がアサインできるわけではない。多くのIoTはPoC(実証実験)から始まり、その段階から多くのコストをかけて、専門家と呼ばれる人員を集めることは難しいからだ。このため、IoTプロジェクトに関わる少数のエンジニアたちは常に幅広い知識を持ち、正しい方向にプロジェクトの舵切りができることを求められている。

そんな渦中にいる人にぜひ本書を読んでほしい。特に2〜4章では「聞いたことあるけどよく知らなかった」という技術用語にたくさん出会えること間違いなしだ。

落とし穴にハマらないための「システム設計」を学べる

5章ではクラウドを用いたデータの活用方法が、6章では双方向通信・遠隔制御についてまとめられている。このあたりの知識を体系的にまとめた書物は自分の知る限りこれまでになく、これまでは多くの事例や技術記事を読んで「こういうケースでは、こういう設計をすると良い」という脳内マップを作ってきた。

特に6章の内容は自分自身も何度も直面した「落とし穴」である。IoTプロジェクトにおいてステークホルダーから「双方向通させたい」という要求を受けることは非常に多い。双方向通信できないわけではないが、それをすると様々な副作用があることを上手く言語化できず、プロジェクトの進行を阻害する経験を何度もしてきた。

本書には、その副作用が体系的に記載されているので非常にありがたい。次に同じシチュエーションに陥った際は、本書を読み返すことで上手く問題点を言語化できそうだと感じている。

IoTプロジェクトにおける思考の抜け・漏れを防止できる

前述の通り、IoTを構成する技術要素は非常に多い。技術要素が多いということは「考えることが多い」ということでもある。考えることが多いと「XXについて考えていなかった」「YYについて想定が誤っていた」ということが頻発する。

本書はあらゆる解説が網羅的である。例えば「通信」に関して「Wi-Fiについては重厚な解説があるがセルラー通信については解説していない。」といったことはない。何ならPANやLPWAについてもきちんと紙面を割いて解説している。これはデバイスにおけるセンサーの解説や、通信プロトコルに関する解説についても同じである。

何かを選択したり提案したりするときに、この本の該当する章にちょっと目を通すようにすると、思考の抜け・漏れが防止できるはずだ。

「技術書を書く」という点でも参考になった

これは自分に特化した「良かった点」であるが、自分自身いつか商業誌を出版したいと考えていたので、自分が得意とするIoTに関する商業誌を読むことで、本の構成や文章・図表の書き方など、参考になる点が多く見つかった。

一例を挙げると、本書では参考文献を提示する際、必ずQRコードが併記されている。「紙の本にURLを記述してもそれを手打ちしてアクセスする人はほとんどいないだろう...」と薄々思っていたので、これは目からウロコだった。

まとめ

現場のノウハウがまとめられた1冊なので、ぜひ手にとってみてください。

@y_uuu
Fusic IoTクラウドエンジニア 兼 #fjordbootcamp メンター。2023 Japan AWS Top Engineers。組込み系→Web系への転職&関西→福岡へのJターン。趣味はルービックキューブとベース演奏。 @Y_uuu bsky.app/profile/y-uuu.net