一限が長すぎる。お経のようなフランス語とその解説をぼんやり聞いていると、当てられた人が簡単な内容も答えられなかったり、どこを聞かれてるかわからないなんて事が続いて先生も少しやる気を無くしている様子だった。僕はその問題の答えもその気持ちもわかるっすよ。流石経済学部だなぁと思いながら早く終わって欲しくて何度もスマホの画面をタップして時間を見ても進んでるのはたったの三歩。嗚呼、遠い。これほど文明は進歩しているのに千里の道を千歩から行けるものはまだ発明されてないのか。
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あなたの残り香がする。あなたを見送ってからそれに気付くのにそう時間はかからなかった。あれほど頬をすり合わせていたのだから当然ではあるのだが、風と共に鼻に達する匂いを感じる度に何とも言えない幸福感に包まれる。陳腐だけれど、あなたが隣にいるみたい。この香りがなくならないでくれ、面接までそばにいてくれと思いつつも、香りとともに今日のことを思い出す。ハグをして初めて「世界に2人だけでいる」みたいな歌詞の気持ちがわかったこと。顔をたくさん触られた今日に限ってひげを剃っていなくてあなたが不快に思っていないか心配になったこと。あなたが私を見つめるときに魅せる少しの鋭さを隠し持った目が好きなこと、あなたの控えめで柔らかい唇がまた欲しくなること。ほんの2日前、初めて好きな人とキスをして以来僕はもっと欲深くなってしまったらしい。あなたと話しながらこれを綴っている今も既に会いたくなっています。今日あんなに充電したのにな。恋愛にモバイルバッテリーはないのですか。そんなことを思っているとあなたも寂しくなってきたという、声だけでも感情って移るものなのか。