ある三人組でたまに遊ぶ。
LINEは週一くらいで動いたりピタッと止まったりしつつ、実際に会うのは二ヶ月に一回くらい。
年の離れたお姉さまと、二つくらい年下の女の子と、私。同じ派遣会社に登録して、同じ売場で働いた時期があるというだけの共通点。
妙な組み合わせだけれど、職場の愚痴を言い合ったり、自分では行かないお店に誘われて行ったり、新発見できるのが楽しくて気に入っている。
今回は百貨店のバレンタイン催事に行くことになった。
推してるチョコレートを毎年買うというお姉さまに、何もわからない私と女の子がついていく遊び。
私は甘いものを食べることはあるけれど得意ではないし、チョコレートを買うことはかなりめずらしいし、バレンタインなんてここ数年「繁忙期」のイメージしか生まれない。
行ってみると熱気がすごくて圧倒された。狭い売場に人が多すぎる。何が何だかわからない。
美味しそうなものを買おうと思っても、全部同じに見える。
会場二周目でようやくショーケースに近づき、説明を受けることができた。試食もくれた。
一番気に入ったチョコレートはスッと溶けて口に残らない感じが好みで、お姉さんの説明もうまくて感じがよくて、すごく買いたかったのだけど、六個で四千円もするのでブレーキがかかった。またいつか、タイミングがあったら買います。
好みのしっとり系アメリカンクッキーを一つ、普段は食べない味のボンボン・ショコラを二つ購入した。
それで終わればよかったのだけど、私は催事の他に、もう一つ行く店ができてしまった。二人も面白がってついてきた。
ブルガリ イル・チョコラート。
ここ四ヶ月ほど追っかけているアイドル中島健人がアンバサダーを務めるのが、ブルガリ イル・チョコラートの「コレツィオーネ・サン・ヴァレンティーノ2026」(今調べました)。
フワッと「ブルガリのバレンタインチョコのアンバサダーやるんだな~すごい」と認識していただけで、買いに行くことはないと正直思っていた。甘いものに興味がないので。
ところが百貨店に着いた瞬間、中島健人の顔が飛び込んできた。
売場に置いてある冊子にいたのだ、彼が。
思わず「ケンティー!?」と口にしてしまい、友達に説明するはめになった。
まずはと向かったバレンタイン催事の熱気で興奮が高まったのと、友達の後押しもあって、ブルガリのチョコレートを買うしかなくなった。
お店に戻り、商品を吟味。
あとで確認したら、インスタでメインの商品をめちゃくちゃPRしていたのだけどチェックしていなくて、他にも何人かお客がいてよく見えなくて、どれ買えばいいんだ?状態。
もはや「自分のため」ではなく「アイドルのため」チョコレートを買いに来ている。
お値段はさすがのブルガリ価格。普段ならチラッと見てやば!と近づきもせず帰る。
店員さんが私の気になった焼き菓子の説明をしてくれたのだけど、ちょっと多すぎるし高すぎる。
意を決して「中島健人さんを応援するという意味で一番おすすめのチョコレートはどれですか」と聞いた。(キモオタをやってしまった!!!と五回くらい脳内反省会を開いた)
店員さんはさすがブルガリ、さすがプロ。優しくおすすめしてくれたので、言われるがままに買った。
三個入 四千二百円のチョコレート。
何をしているんだろう……と我に返ったのは数時間後。あることに気付いた。
私、買ったチョコレートの味の説明を受けていない。
フルーツ苦手、アルコール苦手の私は、美味しいと感じるチョコレートの幅が大変に狭い。そもそも偏食の人間が、知らない味のものを買うなんてまずない。
おそるおそる調べたところ、味は「ラズベリー ピンクペッパー」「ピスタチオ オレンジペッパー」「ストロベリー スターアニス」の三種類。がっつりフルーツだった。
かなり頭を抱えたのだけど、たぶん売場で言われたとしてもハイテンションのまま買っていた可能性は高い。より迷走して、食べられる味の増える五個入(七千円)を選んだかもしれない。
これも挑戦。おいしいコーヒーを用意して、一緒にいただくことにする。
チョコレートにもハイブランドにも興味がなく、味への警戒心が強い私をぽんと動かしてしまう、アイドルの光が強すぎる。
ブルガリのチョコレートを持って帰った家は荒れ果て、テーブルはスペースがなくて無理やり物を置いて使うような有り様なので、久々に反省した。
こんな散らかった部屋でブルガリのチョコレートを食べることは許されない。
賞味期限までに部屋を片付けて、掃除をし、くたくたの部屋着ではない格好をして、チョコレートをいただくのを今月の目標とする。