今日は深夜に起きて作業していた。こうした日にはある程度余裕を持って日課を終えることができる。単純に長尺の作業時間を取れるからである。
まあしかし、基本的には夜は寝て朝起きて活動した方が調子がいいのが朝型人間である私だし、そうでなくともこのところ、イラスト一枚にかける労力と精神力が膨らみすぎていて、一日の初めに立ち絵を一枚描き上げるともう以降何もする気にならずぼんやりして過ごす、ということが増えている。結果として朝型の生活をしながらも、昼以降はほとんど使い物にならないという日々が常態化してきている。
そもそもが手数で押し切るタイプの絵の描き方をしてきた。絵という趣味の大半を独学で履修してきて、多くの人が美大や専門学校で教わるような技術、テクニックを習得できなかったことから、ひたすら手数で情報量を高めて絵の巧拙をカバーするタイプの描き方を築いてきてしまったのである。
こうした描き方をしている人がプロに全くいないというわけではないと思う。例えば、ソシャゲなどで重鎮イラストレーターの地位を気づいている「タカヤマトシアキ」さんなんかは、もちろん基礎力が凄まじい上で手数で圧倒するタイプのイラストを描かれる。今をときめくトップイラストレーターである「ろるあ」さんや「れおえん」さんなんかも、割と手数で情報量を高めて見せるタイプの絵を描かれているんではないかと分析する。
とはいえ、現在の流行は割と、センスとテクニックにものを言わせて低コストで仕上げるタイプのあっさり塩味系の絵柄に以降してきていると思う。線画自体も緻密に整えすぎず、勢いを重視した鉛筆ブラシなどで決め、塗りはもちろんざっくり色と影を置くのみ。非常に情報量の低い画面が流行り始めている体感がある。
この流行の変遷は、主にPC画面上で見るものであったデジタルイラストという分野が、徐々にタブレットやスマホなどの狭い画面で見ることを想定したものに変わってきているが故の変化なのだろうと思っている。加えて、美術や芸術、ファッションなどの流行はぐるぐると螺旋階段上に繰り返されるものである。つまりは過去の低解像度時代の情報量が低い画面が、一周回って「なんかオシャレ」と脚光を浴び始めているのだと思われる。
まあ何が言いたいかといえば、情報量を高めた画面=いい画面とは必ずしもいえないという話だ。ふぉろわっさんが先日、「アマチュア界隈では特に、シンプルに仕上げるノウハウがないために情報量の過密した画面が流行りがちだが、本当に技術がある人はあっさり描かせても上手い」ということを言われていた。私もこれにはひどくうなずかされた。シンプルに仕上げるノウハウがないためにただただ手数の多さに頼っているアマチュア、とは、まさに自分のことだなと思ったのである。
去年後半は特に、意識して過密した画面を作る工夫をしてきた。工夫、といっても、単純な作業時間と一枚にかけるコストを増やしてひたすら手数で押し切る、という体制づくりをしてきたのである。まあ、それに関しては一定の成果を見たので、今年は足し算から引き算、そしてできれば掛け算へと歩を進めていきたいなと思っている。
具体的には、手数を減らして情報量を削っても「保つ」画面作りの研究をしていきたいなという思いだ。厚塗りという描写法においては、基本的に一定の手数をかけなければチープに見えやすい側面があると思うが、そこを少ない情報量で洗練された見栄えにできないか探ってみようと思っている。
そして、これもできればであるが一日の最初に生産する立ち絵のコストを下げてその後に取り掛かる二枚目以降、もしくは他のなんらかの勉強に精神力・体力を割振りたい思いである。
まあそんなわけで、今年の頭の目標は、なるべくシンプルな画面作りを覚えることということで、一つお願いします。今年もたくさん描いていけるといいなと思っている。頑張っていきましょう。