今日あたり、XのTLに下のような記事が流れてきた。
この記事に関してはAI反対派は見るのも辛いだろうが、とりあえず目を通してもらえると私が助かる。技術職の人間から見た今回のXおよびAI騒動に関しての客観的意見が書かれており、私などは頷きながら読んだが俺は生成AIが嫌いだ!!! という人がこの記事を読んでもどうしても受け入れ難いのも理解できる。
思うに、私はイラストを始める前にプログラミングを独学していた時期があり、IT屋の気持ちも絵描きの気持ちも両方理解できる人間である。だから今回の騒動に関しても割とIT屋としての視野も持ちつつ俯瞰で見ることができており、正直AI反対派のやっていることには確かにこの人の言うように「陰謀論」めいたところを感じないでもない。
AI反対派は、理屈ではなく感情で線を引いている。そもそも生成AIは明確なトレスや丸パクリをするツールではなく、学習した画像の要点を抜き出して混ぜ合わせ、なんかいい感じにして出力する再出力ツールである。それでも絵描きにとっては、それが「自分が苦労して制作した成果物を無努力で盗まれている」という認識になってしまう。
なぜか。絵描きは感情で動く生き物だからである。
この人の言うIT屋は、ひたすら合理でものを考える傾向にある人間が長じる分野だ。だから先ほど私が言ったように、生成AIを「努力をパクるツール」だと認識していない。この両者には「理屈を優先して考える」か「感情を優先して考える」かと言う致命的な論点の相違があり、然るにIT屋寄りの考え方をするAI術師と、芸術を愛する感情型絵描きとは話が合うわけがない。そもそもの論点・争点が違うのだ。
AI術師は法律や技術的問題、実際の事例などからごく客観的に理性での主張をしているのに対し、絵描きは「そんなことは言われなくてもわかってるけどとにかく私たちは感情的にそれが嫌なの! 嫌だから嫌なの!! 理由なんかないの!!!!」と言っているのである。
しかし、私は理性的でないこれらの主張を、「ただの感情論じゃん」と無碍にしていいとは思わない。
イラストという分野において、「好き」や「嫌い」、「楽しい」や「つまらない」といった感情は、成果物の出来に常に大きな影響を及ぼしてきた。好きなものを楽しく描けばいい絵になる。実際にはそこまで単純ではないが、最初の記事を書いた人とて好きなものをのびのびと楽しく描いている絵描きに惹かれたから今回モヤモヤしてあのような記事を執筆したのであろう。
絵描きが楽しく絵を描いていて欲しいという願いは彼も同じなのだ。だから、彼には絵描き側の感情論も理解しようと努めて欲しいと私は思ったし、彼ならば「完全にわかる!!!」とはならなくても「なるほどな、そういう考え方もあるか」くらいの理解は可能ではないかという気がする。
AI擁護派とAI反対派の騒動を今まで見てきて、常に中立の立場にあった私などが思うに、お互いに感情がヒートアップしていてまともな議論ができなくなってしまっている気がしている。とにかく相手のことが嫌いになりすぎて、お互いの主張を冷静に精査できていない。特に絵描き側の感情のヒートアップが激しく、その感情の揺れ動きの激しさから本来正しくない理屈まで不安に駆られて信じてしまい、結果トンチンカンな対策を取り始める、みたいな傾向も実際に見られる。私が最初に「陰謀論めいたところもある」みたいなことを言ったのはそれが理由である。
結論。絵描きもIT屋もちょっと落ち着け。
お前らの気持ちは痛いほどよくわかるし、感情論もバカにできないものではある、けど、このまんまただただ激情に駆られて相手の論点の穴を突いた論争に明け暮れても、誰も得るものはないし得しない。
一回頭冷やそう。その上で自分たちが納得できる未来に近づけるように、大人として話し合いをしよう。お前らの目の前にいるそいつは、本当にお前らの敵か??? お前らを心配して協力してくれようとしている人間の手すらも払い除けようとしていないか???
まあ、ちょっと落ち着いて考えてみてほしい。
なお、Xの騒動に関しては正直、市井に流れる噂に虚実が入り混じりすぎていて、誰も正しい判断ができないようになっているように感じる。俺も正しい判断ができているとは言い難い。だから引き続き状況を正視しつつ、少しでも正しい対応ができるように考え続けていく必要があると思っているし、大事なのはわっとなって偽の情報を脳死で拡散したりしないようある程度のリテラシーを持つことであると思う。
長々とすまなかったな。読んでくれてありがとう。
あなたの懸命な決断に期待する。