今ほどnoteをぼんやりみて回っていたところ、下のような記事を見かけた。
「金で上達速度を買う方法」と文中に題されているが、言葉ほど物騒な内容ではなく、要するに椅子や机、モニターなどの備品を整備し、日常をコントロールして健康とメンタルの健全さを保つのが上達にまず何より必要ですよ、という内容であった。これには非常にうなずかされた。
自分の話になってしまうが、私は元々の肉体が非常に堅固であり、中学以降目立った病気をしたことがなく、風邪すらも数年に一度しか引かない。加えて小学校六年間嫌々ながらスイミングスクールに通わされていたので、そもそもの体づくりが一般人よりはできている。さらには生得的なメンタルの強さもかなりのものであり、これらが絵を描く際にもたらしてきた恩恵は非常に大きい。
まず、体づくりができていると集中の質と持続時間が圧倒的に伸びる。長時間作業していていも疲れづらくなるし、筋肉がある程度ついているとエネルギー効率も上がるので、何かと有利になるという恩恵を受けられるのである。メンタルに関しては言わずもがなだ。精神がガタガタの状態でいい作品は描けない。
むしろ絵を描く際に一番重要なのはメンタルだと言っても過言ではないと思う。まずモチベの維持のために精神をある程度健全な状態に保っておく必要があるし、楽しい気持ちで絵が描けるかどうかという点も成果物の仕上がりに酷く影響する。そこで、私がやってきたメンタルコントロール術を二つほど、参考程度に紹介してみる。
⬜︎ルーティンで日常を形成する
かのスティーブジョブズも、平常的に使える脳の領域を増やすために、生活をルーティンで細かく自動化していた。例えば毎日着る服に悩む余剰な手間を削るために、似たような服を何着も揃えてそれを着回す、などである。そこまで切り詰める必要はないが、毎日の起きる時間、その後の目を覚ますためのルーティンワーク、三食食べるタイミング、作業の配分などをある程度決めうちしておくことで、ぬるっと生活を送ることができるし決められた時間帯にルーティンで作業に入る習慣づけをしておけば、これまたぬるっと毎日の作業に取り掛かることができる。
私の場合、朝起きたらまず顔を磨き、口を濯ぎ、コーヒーを一杯飲んでからSNS巡回を始める、までをルーティン化している。その後に大体決まって作業に取り掛かるようにしているので、毎日の癖として比較的障害なくお絵描きを始められるのである。
また、作業の手順をルーティン化して、ある程度自動化しておくことも有効である。ラフ→下書き→線画→塗り、などの各段階の手順を大まかに決めておくのだ。これをやることで一つ一つの段階の作業時間や手取りの目安が立てやすくなり、また毎回似たような作業の繰り返しという状態に持っていくことで作業に手を「慣らして」、毎度一定以上のクオリティの作品を産むことができるようになる。
⬜︎痛みや刺激に鈍感になる
これは私が生来心掛けてきたことだが、自分の心を極力「鈍く」保つということである。
先ほども書いたがメンタルがガタガタだといい作品は産めない。まず感情が昂っていると目の前の作業に対する集中力が削がれるし、自分の描いているものを客観的に見られなくなるし、そもそも絵を描く気分にならないことが多い。これを防ぐために、日常的に起こる刺激や痛みに心を慣らしておくのである。
これは、あらかじめあらゆるパターンの心痛や苦痛を想定しておき、実際にそれらを体験する、というところまでをセットで行うことで為される。例えば上司に嫌味を言われる、ネットで誹謗中傷を受ける、出かけた先で大切な小物を紛失する、などの些細とも言えるアクシデントには、実際に生きていると度々遭遇するものだ。これらの目に遭うたびに動揺し、嘆いたり泣いたり自分の不幸を儚んだりしていては、命や時間がいくらあっても足りないし結果絵を描くための精神力が削がれたりする。そもそも死ぬほど嫌なことがあった日に、よし、絵を描こう、とはならんだろう。さっさと風呂に入って寝てしまいたくなるものである。
そこで、あらかじめそれらの嫌な出来事を頭の中でシミュレーションしておく。できればそれらの出来事に遭うかもしれない可能性とまともに向き合い、遭遇した際の心情なども事細かに想像しておく。結果、実際にその出来事に遭遇したときに、「あ、これは想定通りだ」となり、受けるダメージを減らせるのである。
このイメージトレーニングは、平時から癖のように行なっておくといい。常に最悪のパターンを想定して心構えをする、というイメージである。若干手間に感じるかもしれないが、悪いことを真っ先に予見する力を育んでおくと絵がどうの以上に非常に役に立つので、その気になったらぜひ実践してみていただきたい。「もしも」の場合にも慌てず想定通りの対処をすれば良くなるので、行動の精度が段違いに上がる。
…という感じである。他にもいくつかメンタルを維持するために心がけていることがあるが、長くなったのでそれはまた次回以降に回す。
必要なのは、「これはいつも通りだ」といういわば「凪」の状態に心を保つことである。インプットとして創作物や楽しいことに触れる間は思いっきり心を動かせばいいが、嫌なことや制作の際にはひたすら淡々と凪の心で作業として手を動かす。これができるようになると生産力が一気に上がるので、まあよければ騙されたと思って実践してみてください。実際に私が普段やたら大量の制作物を描いて出しできるのは、これらのメンタルコントロールを行なっているからである。
昨日は徹夜だったのでそろそろ仮眠をとります。おやすみ。