今でも後悔している過去の失敗が無数にある。表題の件もそのうちの一つだ。実際今思い出してみると些細な事で怒ってしまったなと思うし、あの頃の自分は思春期である事もあって精神的に過渡期であり、自分の感情のコントロールが上手くいかなかった。
妹が、私の描いた絵に勝手に手を加えた事に、瞬間的に強い怒りを発露して怒鳴ってしまったのだった。
あの頃私は、ちょうど中学を不登校になりずっと家にいて、コミュニケーションの不足はその頃与えられたパソコンでのネット通信で補い、ネットのコミュニティで人とチャットする傍らほぼほぼ絵ばかり描いていた覚えがある。とにかくやることがなくて時間だけは膨大にあったので、自分が心からのめりこめる趣味として、明確なゴールのないイラストという分野はもってこいであった。
その頃これもネットで見つけたデッサンのやり方、みたいなサイトを参考に、トイレットペーパーやティッシュの空き箱なんかをデッサンした。独学にしてはそれなりに上手くいった覚えがある。そこから、徐々にモチーフが複雑化していき、私は人の顔、つまりは肖像画(ポートレイト)を中心に描くようになっていった。
初めは妖怪みたいな奇妙な顔貌の肖像が並んでいたものの、徐々に特徴を掴むコツなんかを体得し始め、次第にその頃アカウントを持っていたSNSでも褒められるようなものが描けるようになっていった。その時私が描いていたポートレイトの一つに、妹が断りなく手を加えたのである。
それは私の中でもかなりよく描けた部類に入る一枚であり、それだけにその成果をめちゃくちゃにされた怒りはかなりのものであった。だいぶキツイ言葉で罵った覚えがある。ただ、あの頃私もそうであった訳だが、妹も思春期でかなり揺れ動きの激しい毎日を生きていたようだったし、私が妹を怒鳴りつけたその記憶が彼女の中で今も悪しき形で巣食い続けているような気がしてならない。
実際、妹はいまだに感情のコントロールがうまくいかない大人として生きているし、それ以上に私のことが嫌いらしくある一時からほとんど会話もしなくなった。
私はこの手の罪を数限りなく犯してきている。二十代くらいまでの私はとにかく未熟であり、方々に迷惑をかけまくりながら生きていたし、両手では足りない人の心に傷を残してきた。それらを、ひどく後悔している。
これからは彼ら彼女らに対する贖罪のために、少しでもいい人間になるべく生きようと決めている。もうあの時重ねた言葉、態度、別れには取り返しがつかないが、少しでもまともな人間として死ぬために。
許してもらえるとは思っていないし、許されて楽になるつもりもない。誰よりも、私が私を許せない。