「圧倒的な力」ってのは、実際あるもんだ

山田 唄
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公開:2024/10/23

 しばらく前に、noteで楽しみに見ていたにゃるらさんのアカウントのフォローを外した。何だかこのところ宗教にかぶれて価値観がどんどん浮世離れしてきていらっしゃるように感じていたし、そういう彼を見ていると何か巨大なものに突き動かされて生きている人間の「凄み」みたいなものをまざまざと感じて、ああ、自分とは完全に隔絶された価値観で生きるようになったのだな、この人は、とまあ寂しかったのである。

 しかして今ほど、思い立ってまたにゃるらさんのnoteアカウントを開き、いくつか記事を読んでみた感じ「く〜〜〜っ、これこれ、これなんだよ!!」という魂の充足を感じたのであった。

 これはおそらく私の側の変化ではなく、にゃるらさんの側の変化なのであろう。夢の中を漂うようだった彼の生活が一区切りついて、また元の地に足ついた世界に戻ってきてくれたのである。

 ここで「おかえり」などと言えるほど私はきちっとした読者・ファンではないし、実際にこの数ヶ月にゃるらさんから距離をとっていたわけだから、とてもそんな気易い言葉が口から出てきはしない。まあでも、また元通りネットやオタクに対する深い造詣がありながらも気の抜けた記事を書いてくださるようになって、私は嬉しいです。またフォローさせていただきました。

 さて、ここからは彼の記事を久々に読んで思ったことだが、どの界隈にも「圧倒的な力」を持った個人が割と数多いるものである。神絵師、とか、神字書き、とか、ともかくもその界隈で普遍的な地位と実際の技術力、加えて求心力までも持ち合わせているような本物のスーパーマン達のことだ。にゃるらさんは間違いなくライター界で、この圧倒的な力を持った達人の一人として数えられると思う。

 何というか、本当にすごい人間にまみえると、彼らから感じる「圧」で割と一発で「この人はすごい人だ」とわかるものですよね。文章なら文章、イラストならイラスト、楽曲なら楽曲。それらアウトプットされた成果物から、それまでの彼らの研鑽と地のセンスと深い知性と精神性が、霧のように立ち上っているのが体感で、わかる。

 漫画「ハンター×ハンター」で、優れた暗殺者として育てられたキルアが主人公であるゴンに「お前も相手の実力が自分より上か下かは何となくわかるだろ? この感覚を磨いていくと(相手の実力を見抜く)精度が上がるんだよ」みたいなことを言うシーンがある。まさにこれで、何らかの分野である程度研鑽を積んだ人間は、同分野、および同系統の別分野の才能を見出すという能力に開花するものだ。自前のスカウターを装備しているようなものである。相手の戦闘能力がある程度数値化できるようになっていく。

 まあ、私もイラスト界隈、小説界隈で結構長い間生きてきたので、さまざまな人を見た。大口叩く割に全く実力がない人もいくらでもいたが、中には本当に力を持っていて、かつそれを常に当たり前のように研ぎ続ける修験者みたいな人間も多々いた。

 彼らの作品を見るたびに、私は決定的な敗北を知らされて、落ち込み、しかし焦がれて仕方がなく、筆を折ることもできないまま憧れに突き動かされて描き続けることを強いられる。今になって自分の才能がそれほどではなかったことに気づきつつあるが、まあそんなことはもはや些細なことだ。

 この広いネットの大海で、まだ見ぬ圧倒的な才能、努力、継続の結晶に出会うたびに、それはもう複雑な嫉妬とも希望ともつかぬ感情が胸に広がる。

 こんなにすごいものをこんな風に自然に生み出してしまえるのか、なんという神の業だろう。すごいなあ、すごいなあ。自分にもこんな輝きを放つものを生み出せたら。そうして喜びとも絶望ともどちらともいえない思いを味わう。この複雑怪奇な感情が、私がいまだこの苦しみ多い浮世に執着するほぼ唯一の命綱なのだった。

 私はもっと新しいものを見たい。すごいものに、触れたい。その腕で俺の自尊心を粉になるまで打ちのめしてくれ。

 お前の圧倒的な力を、見せつけてくれ。

@yamadauta
創作やりながらギリギリで生きているおじさん。ここには普段考えてはいるけれど表に出せないタイプの思想強めの文章を書いて出ししていこうと思います。