尼崎にて

ymyh
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公開:2025/2/23

展覧会めぐりのために阪神電車で尼崎へ行ったら、阪神尼崎駅前の広場がリニューアル工事の真っ最中でした。ちょっとした森といった趣すらあったのが、二・三本ほど残して伐採され、跡地にカフェが入る建物が建てられるなど、最近の駅前再開発あるあるといった様相を呈していたわけですが、個人的に気になったのは、そんな広場の一角にひっそりと建てられていたモニュメント(?)たちの行方でして。以前ここを歩いたときは工業の神様めいた何かの銅像や石碑が建っていたのですが、瞥見する限り、後者は残っていました(画像参照)。

この石碑、1973年に当時の市長が揮毫した「尼崎に緑と青空を」という言葉が刻まれていますが、この頃の尼崎市は工場の排煙と阪神間を行き交う車の排気ガスによる大気汚染が深刻化しており──だから1990年代までこの尼崎市や、隣接する大阪市西淀川区の人々による健康被害をめぐる訴訟の行方は、(伊丹空港の騒音問題とともに)関西ローカルニュースにおける定番のトピックだったわけで──、従って「緑と青空を」というのは、(市長のみならず)尼崎市民の魂の叫びそのものだったと言ってもあながち揚言ではない。そんな背景があるから、さすがにこの石碑は撤去できんわなぁと思ったし、もしこれを撤去したり壊したりしたら、ひと頃ネットミームとしてもてはやされた「因習村の祠」みたいにエラいことが起こりそうなのも、また事実(事実?)なのかもしれない。

なお銅像の方は管見の限り、見つかりませんでした。ヤバい←←


ところで当時の市長が「尼崎に緑と青空を」と揮毫してからちょうど半世紀後の2023年、市民会館で『ひろがるスカイプリキュア』のショーが開催されたそうで(画像参照)、上述した尼崎史と重ね合わせると、エラいタイミングで「ひろがるスカイ」に意味深なニュアンスをバチバチに与える形でなされたことになり、きわめて趣深い出来事ではあります。このときプリキュアによって尼崎の負の歴史(終)状態がもたらされたのではないか──などと意味不明の供述をしており。