企業活動の本質は、限りある資源を投資する場所を見極め、投資からリターンを回収し、そのリターンを原資にステークスホルダーへの分配と再投資を行うことである。
この循環は初めは小さくとも、適切な投資に成功することで大きくなっていく。すると、ステークホルダーへの分配も大きくなり、参加者が潤う。
当然ながら、初めの1サイクルはとても小さい。小さなサイクルを少しずつ大きくできるように、投資は複利を創出できるようにしなければならない。
この間の仕事はエキサイティングだが、投資への緊張感がある。分配の果実は少なく、将来大きくなるであろう分配への期待値で企業をドライブする。
苦しいが、重要なフェーズだ。そして、企業とステークホルダーの利害を「将来の分配」に対して一致させやすい。
企業が成功すれば、ステークホルダーも成功するという構造が創れる。
だから従業員は企業の成功にむけて真っ直ぐに仕事をする。これがインセンティブが揃っている状態だ。
しかし、このインセンティブを歪めてしまうことがある。
例えば「事業外からのリソースの獲得と分配」はその一つだ。ステークホルダーへの分配原資に対して、外から注入された資源がマジョリティになると、それは持続的ではないばかりか、インセンティブを歪める。
資金調達と、分配ルールを司る報酬制度はそういったリスクを孕んでいる。
従業員としても、会社の利益が増えなくとも、自身の給与・賞与が増えていくパスがあるとしたら、そちらに向けて優先的に力を注ぐのは自然だ。
そうすると、企業のゴールと従業員のゴールは自然とズレていく。経営者がインセンティブを歪めることで起きる。VCがなんと言おうが、最終的に決めるのは経営者。
インセンティブは歪めてはならない。自社にあった循環速度を選ばなければならない。そのためにステークホルダー自体も選択し続けなければならない。合わないのなら、替えていく必要がある。