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ito
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3/20

きのうの夜から向かいのベッドのおばあさんが発熱をしてしまい、なかなかにつらそうだった。中途覚醒が何回か。もし大変であれば頓服にたよってもいいかもと看護師さんが言ったくれたけれど、癖になってしまわないか心配。まだ食事には抵抗や恐怖心があって、思うように進まない。朝ごはんのあとベッドにもたれていたら、いつのまにか眠ってしまっていて、看護師さんの挨拶で目が覚めた。なかなか食べられずにいることを話して、いまはそれで充分なのだと声をかけてもらう。近いうちに、主治医の先生と前回の入院ではできなかった話やわたしが抱えているものを深く掘り下げていく時間を設けてもらえるようなので、うまく話せたらいいなとおもう。

ゆっくりと空模様が翳っていって、次第に雨が降りだしてくる。土門蘭さんの『死ぬまで生きる日記』を読み終えた。胸のなかにしっとりと広がっていくものがある。とてもいい本だった。

きょうからメイバランスもう1本が夜に追加になった。先生からその提案があったとき、反射的にこわい気持ちが湧き上がって、たまらないほどの抵抗感が自分のなかにうまれたことに気がつく。3口分はどうにか摂り入れられた。これからどうなるだろう。不安だ。

3/21

測定の日。体重が落ちていくスピードが増している気がする。採血もした。朝ごはんを終えてゆっくり過ごしていたら、ものすごい地響きが。まもなくして大きな揺れがやってきたものだからびっくりした。看護師さんたちだって驚いただろうし不安だったな違いないのに、気丈に患者さんたちに大丈夫だと声をかけていて頭が下がる思いだった。落ち着いたあとに、心電図とレントゲンの検査へ。

いままで制限回数のなかった院内散歩が1日に1回になった。きのうの話の雰囲気から薄々とは予想していた。O先生とT先生のふたりで相談してそのような結論になったらしい。本来なら看護師さんを同伴させたいくらいだけれど、わたしの気持ちを尊重してそこは免除していただいたようだ。そこまでの状態に自分があるのだという危機感がない。それこそが問題なのに。

サイズ感がちょうどいいからという理由で、家から連れてきたガマくんにナースコールを持たせている。何人かの看護師さんたちに懐かしいと気がついてもらえてちょっとうれしい。ねむる前、突然こころ細くなった。

3/22

ときどき挨拶やちょっとした言葉を交わす間柄だった同室の方がなにかの事情でベッドを移動するらしく、報せにきてくれた。朝ごはんのあとにゆっくり過ごしながら『フラッグ・デイ』を観る。『I am Sam』でしか知らなかったショーン・ペンの雰囲気がだいぶ異なっていて、やっぱり俳優さんはすごいなとおもう。

デイルームで本を読みながら、近くでテレビを観ていた患者さんとぽつぽつとした世間話。でも相変わらずの人見知り。男性とお話をするのはいつも緊張してしまう。