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ito
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月に一度の外来の日。測定の結果がいままでで最も低い数値になった。これ以上は自分の力では難しいだろうことと、このままだと命の危険があるからと先生から再入院を提案される。活動量は変わらないのに食べられる量が日を追うごとに少なくなっている自覚はあったけれど、こうして言葉として突きつけられるとやっぱりショックだったし、不甲斐なさや周りの人たちへの申し訳なさがあった。でも同時にどこか自分のこととは思えなくて、本当にそこまで深刻な状態なのだろうかとも感じながら、すこしだけ時間をくださいと返事を待ってもらうことにした。

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入院の意思確認の連絡をするとき、緊張と不安があって声がふるえた。家族や恋人とよく話し合って、入院をする方向でお願いしたいです。そうは口にしながら、やっぱりいまだに自分のために決めたことだとは心の底から言えなかった。それがどうしてなのかはわからない。ただそれでも、誰かにこれ以上の心配をかけるのはたまらなくいやだった。応対してくれた看護師さんが電話を終える間際に、こうして連絡をくださってありがとうございますと、あたたかな温度のある声でそう言ってくれた。

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入院の日。診察をしてから諸々の検査。前回もそうだったけれど、特別動き回ったりしているわけでもないのに検査を受けるのにはやたらと疲弊する。でもこの大学病院のスタッフの方々は皆さんほんとうに親切。レントゲンを撮るときに結っていた髪をクリップで留めてもらったら、まるでちょんまげヘアのようになってひとりで笑いそうになった。主治医の先生には、いまはとにかく焦らずに食べられる量だけを食べていきましょう、そして退院までの時間のなかで自分の内側にある苦しさをすこしでも和らげていく道をいっしょに探っていきましょうと言ってもらえた。不安でいっぱいだし、自分が心の底から自身のための回復を願えるのかもわからないけれど、わたしは先生を信頼している。いまはそれだけで充分かなと、そうおもう。(そして驚くことに、相部屋のひとりの患者さんが前回の入院時にも同じ部屋で過ごしていた人だった。不思議な縁もあるものだね。不調を抱えている同士だから、喜べることではないけれど。)