今日は神戸尊さんのことを書こうと思います。
わたしは神戸尊さんに生かされた。なにもかもがざらついていて孤独の底に這いつくばっていたとき、幼いころに見た“ドラマのかっこいいおにいさん”が、大人と子供のあわいにいたわたしの目の前にもう一度現れてくれたのだ。まるで世界に澄んだ色の雫が落ちてくるようだった。その雫をひとつもこぼさないように、毎日毎時毎分毎秒相棒を見続けていた時期がある。生きる希望はそれだけだった。
S9-13「通報者」。大切な家族を守るため嘘をついてすべて抱え込んでいたこどもに、神戸尊さんはすごくつらそうな顔をして、「でも君のことは誰が守るんだ! 君はもう十分がんばった、もう十分だ……」って言葉をかける。あの言葉は作中のこどもに向けられたものだったけれど、わたしにとっても信じられないほどの救いだった。愛されなくては全部なくなる、取り繕わなくては全部捨てられる、そう思い込んで嘘でもなんでもいいからって必死にあがいていたわたしを、こちら側に引き止めてくれたのはまぎれもなくその言葉だった。
むろん、わたしを支えてくれたのはこの話だけじゃない。神戸尊さんは、ずっとそうだった。警察官として、大人として、人間として、彼はだれかの命を守るために全力を尽くすひとだった。あのころのわたしにとって、それはほんとうに……ほんとうに、光だった。今も、光だ。
物語はどうしたって先へ進む。神戸尊さんは別の道を歩むことになった。今もときどき姿を見せてくれるけれど、彼の道の先になにかがあるのかは分からない。それでも、身勝手に祈りたいと思う。神戸尊さんが、この先もこの世界に警察官として生きていてくれることを。そして、ちゃんと生きたいと思う。彼がわたしの光になってくれたように、わたしも。
何度目の二月一日かはもうわからないけれど、神戸尊さんへ。生きていてくれてありがとう。どうかあなたの未来が、あなたの望むものでありますように。あなたに救われたこどもより、一生分の愛をこめて。