食べることが大変困難な2ヶ月となった。つわりのせいである。
フラジャイルという漫画がある。病理医をテーマとした私の大好きな漫画なのだが、この漫画にはわりと食べるシーンが出てくる。自分が本当に食べられず苦しい中で、とても印象に残ったシーンがあった。
身体中に腫瘍が転移してしまった少女が、治療の副作用で嘔吐が強く出てしまい、食べることが非常に困難になり、肉体的にも精神的にも辛く苦しい日々を過ごす中で、栄養士の方が「つるっと飲み込めるものがいいですよね!」と言って提案したのが冷たい茶碗蒸しだった。吐きそうになりながら、涙を流してひと口食べるシーンで、世界中の食事のシーンが再現されていた。
あまりにも、食べることが当たり前すぎて忘れていたことだが、「食べる」ということは実は奇跡なのだ。健康でなければ人は口から食べられない。そのことをすぐに忘れそうになる。徐々に、少しずつ食べられるようになった今、食べることの大変さと、尊さを思い知った気がする。
未だに食べたものを戻してしまう日もありつつ、あと少しで終わることを信じて。