雨の水曜日。朝は部屋の中に昨日の暖かさがまだ少し残っていた。
自分の正式な病名(症状名)を知ったのは、今から6,7年ほど前のことで、30代に入ってからだった。
欠席や休学のために大学へ提出した数枚の診断書にはどれも「抑うつ状態」と書かれていた。中学のときには起立性調節障害(自律神経失調症)と言われた記憶がある。
浪人生の大学受験シーズンに薬を飲みはじめてから、何度も診察時に処方される薬を変更してもらって自分の症状に合うものを見つけた。
病院の先生たちは病名について詳しいことを言わなかったため、私も質問しなかった。簡単には断定できないのだろう、というのも感じていた。
インターネットの発達によって、自分が処方されている薬について簡単に調べられるようになった。
そこで調べてみて、「あー、私はもしかしてこの病気なのかなー。」と思った。
本当にしんどくて辛かったときは病名なんてどうでもよかった。ある程度自分と向き合う余裕が出てきてから知りたいと思うようになった。
「この病気なのかなー」という憶測は、しばらく心の中にしまっていた。先生に質問しても、あいまいな答えしか返ってこないような気がしていた。それに、限られた診察時間の中では、病名よりも最近の体調を伝える方が重要だった。
今から6,7年前のとある診察で、話の流れで「自分が処方されている薬をネットで調べて、この病気なのかなと思っている」と言ったところ、先生に「…分かっているんだね」と言われた。
推測だけれど、先生たちは下手に病名を伝えたら現実を受け止めきれずに病状が悪化したり、その病気であることそのものがストレスになったり、いいことはあまりないから言わずにいてくれたのではないか、と考えている。そういう治療の指針があるのかもしれない。
おかげで、私は病気を受け入れるために何年にも渡って気持ちを整え準備することができた。