ハリウッドとマルチレイシャル(モーコン2のネタバレ有)

ヤ巳
·
公開:2026/6/15

モータルコンバット2の映画を観てきた。期待通りの出来だった。脚本や設定はガバガバだが、キャラクターの魅力と容赦ないゴアアクション、真田広之をはじめとするアジア系の活躍。キタナとジェイド、クン・ラオとリュウ・カン、ビ・ハンとハンゾウと、同性同士の巨大感情も見られて、異性愛ロマンスが雑音になるタイプの映画ファン的にも嬉しい。しかしひとつだけ、心のしこりのようなものが残った。

私はコール・ヤングというキャラクターに特に思い入れがない。映画版のストーリーは1の血族大事より2の凡庸な復讐譚の方が引っ掛かりなく応援できるし、味方がたやすく死ぬのも折り込み済みだ。そもそもコールは映画版のオリキャラだ。だから彼が呆気なく死ぬ展開について異論はない。物語のテンポを良くし、ジョニー・ケイジを初めとするゲーム原作キャラがより目立つためには彼の退場は必然だったとすら言える。

しかし覚えている人は居るだろうか。2021年のモーコン1の映画化の際、アジア系活躍の熱狂の中。日本描写の監修とスコーピオンの凄みのある演技で注目を浴びた真田広之に並んで、主役をもぎ取ったルイス・タンのインタビューが広くシェアされていたことを。

その記事を今見つけることはできないが、中国系シンガポール人と白人のミックスでイギリス生まれの彼は、それまで「白人を演じるにはアジア人過ぎ、アジア人を演じるには白人過ぎる」と見なされて苦悩していた。昔に比べれば人種的多様性は改善しつつあるハリウッドだが、彼のような役者の居場所はまだまだ少なかった(キアヌ・リーブスのように白人としてパスしている人は別として)。そんなどちらのステレオタイプにも染まれないマルチレイシャルの彼が、彼のまま演じられる役が日系アメリカ人という設定のコール・ヤングだったのだ。

繰り返すが私はコールというキャラクター自体に思い入れはない。モーコンのお約束=味方も呆気なく死ぬ容赦無さも含めて、この作品を楽しんでいる。しかし彼がほとんどセリフも見せ場もなく、護符によってチート化したシャオ・カーンの一撃で頭を潰され早々に退場を遂げた時、ルイス・タンのあの輝かしいインタビューが頭をよぎり、胸が痛んだ。

タンは最期まで演じ切った。しかしこの呆気ない退場は、本音としては無念だったのではないだろうか。願わくばハリウッドをはじめとするエンタメ業界に、彼のようなミックスルーツ、マルチレイシャルの俳優がステレオタイプを求められず、ありのまま活躍できる機会が増えんことを。