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中華BLの倒置とねじれ需要

ヤ巳
·
公開:2026/8/20

数年前、中華BLの『魔道祖師』にしばらくハマっていた。私は元々国産の商業BLをほとんど読まない。食わず嫌いではなく、以前二年間ほど商業BLを買い漁り読みまくった結果(好きな作家は数名見つかったものの)自分には合わないなと判定した。洋画のゲイロマコメ、レズビアンロマコメなどにもあまり惹かれない。私には「恋愛」が分からない。同性間の巨大感情は好物だが、「ロマンス主体」のフィクションがノットフォーミーなのだ。

しかしそんな私にとって、たまたまアマプラで観たブロマンスドラマ『陳情令』、そしてその原作小説『魔道祖師』は衝撃的にハマった。サイキックアクションみのある仙境もの設定、辛く苦しいが見応えのある権力争いとミステリ、一瞬の清涼剤のような青春時代、そしてまた血で血を洗う抗争や弾圧。反発しながらも絆を深めていく主人公の二人。

その後も何作品か中華BLを渡り歩いて、『魔道祖師』ほど刺さる作品には出会えなかったが、かなり楽しんだ。そして今、中華BL(耽美・ダンメイ)は日本だけでなく世界で人気を誇る一大ジャンルとなった。

私はこのブームの、特に日本でのブームの裏に皮肉な倒置があるのではないかと考えている。先に述べたとおり、私は国産の商業BLにほとんど興味がない。他のジャンル作品(少年漫画や洋画アクションなど)をクィアリーディングするのは好きだが、「恋愛ドラマ」には興味が持てないのだ。このタイプの「二次創作BLにしか萌えない」人(恋愛ドラマ中心ではなく、別ジャンルのフィクション中の巨大感情や関係性を愛でる人)は、アロマンティック・アセクシャルではなくとも一定ボリューム居ると考えられる。

そして中華BLは中国国内の同性愛表現規制に引っかかりそうなら、恋愛性愛部分を削除しても話が成立するように、それ以外(武侠とかSFとかミステリとか)の部分が充分主体になる書き方がされていることが多い。

すごく倒置的な事象だと思うのだが、中華BL(耽美・ダンメイ)において同性愛表象の検閲を掻い潜るために物語や設定のロマンス以外の部分が強化されたことにより、(少なくとも漫画・小説ジャンルにおける)同性愛規制のない日本や西洋世界に入ってきた時、「武侠ものやSFジャンル、アクション冒険活劇等で約束されたBLを享受できるようになっている」偶然のバランスが人気を支える一つのファクターなのではないか。

「ブロマンス」はクィアを消し去るとしてすっかり悪い言葉になってしまったし、「BLを超えた」「ロマンスを超えた」のような優劣をつける表現をするつもりもないのだが、これは無視できない要素に思える。もちろん、国産BLも中華BLも等しく好き!という人も居るだろう。しかし私のような層の存在と、この中華BLの規制によってねじれた需要供給は無関係ではないと思える。

※通勤時間中に急いで書き留めたエントリなので後で編集するかもしれない。

@yiam
クィアでニューロダイバージェントなオタクのつれづれブログです。スナック感覚でどうぞ。