私には精神障害と発達障害がある。前職は新卒一般雇用の総合職だったが、ハードワークで、15年の間に三度休職した。今思えば多忙な時期をアクセルベタ踏みの躁状態で乗り切ったあと、反動で長い鬱に陥るというパターンだったのだと思う。
三度目の休職期間中に色々考えて、もうこの会社では安定して勤務できないと思った。身体のこともそうだが、印刷広告業の紙媒体の事業部はここ数年でビジネスモデルが破綻しており、とてもあと20年キャリアを積める場ではないと思ったからだ。
主治医に相談すると、手帳を取って就労移行支援からの障害者雇用をすすめられた。就労移行支援は認定を受けると行政からお金が出て、そのお金で利用することができる。双極もASDも「治る」ものではないから、安定的に生活するためには合理的調整を受けられる環境の方がいい、私は前職での経験値も、外国語の資格もあるし、受け皿はたくさんあるだろう。そう言われた。かなり親身になって色々提案してくれるいい先生だったが、今思うと、先生も福祉の「知識」としてしか知らなかったのではないかと思う。
無職になってすぐ、就労移行支援に通い始めた。行ってよかったと思うか?取り敢えずは、はい。それまでメンタルクリニック以外の福祉に繋がっておらず、医者ガチャも酷くて自立支援医療の制度すら10年近く知らずに3割払っていた。就労移行支援ではスタッフに色々な困りごとの相談ができる。スタッフガチャもあるものの、詳しい人なら別サービスに繋いでくれたりもする。実際、私は就労移行支援を仲介してケアマネジャーとも契約ができた。また、二年間の引き籠りから、週に3日、4日、5日と通所日を増やし、スタッフや他の通所者と話すことで外に出るためのリハビリになった。世の中に色んな人が居ることも知れたし、自分の障害理解とコントロールにも繋がった。
ただ、皆におすすめしたいかといえば微妙なところだ。就労移行支援はあくまで「社会に適応して一般企業に安定就労することを目指す場所」だからだ。正直、一般企業で、或いは勤怠安定して働くのは無理なんじゃないかという人達が涙を堪えて通所しているのを見ると、そこまでして適応しなければならないのか?と疑問が湧いた。職員ガチャもある。発達障害の診断が当たり前になったいま障害福祉関連事業はバブルだ。私が通っていた事業所も全国に次々拠点をオープンして、職員の募集もよく見かけた。未経験・無資格歓迎。未経験でもたとえば誠実で人に寄り添う気持ちを持った職員なら親身になって話を聞いたり、知識がなくても懸命に調べてくれたりする。一方で、知識もなく、話も聞くポーズだけ、ビジネスとしてやっているんだなと丸わかりのスタッフも居た。あとは金銭面。アルバイト禁止なのだ。失業保険が切れてからは貯金を切り崩す生活で、就活が予定より半年長引いたことでかなり追い詰められた。これが元々お金のない人だったら、どうだろう。
障害者雇用については、先生の見立てが仇になった。まず正社員の口が圧倒的に少なく、多くは非正規だ。そしてホワイトカラーで探そうとすると、ほとんど事務や事務補助しか無いのである。アラフォーで事務未経験の私は、書類だけで70社以上落とされた。企業の需要として勤怠が安定している身体・内部障害者が求められ、精神・発達障害が敬遠される(これは地元有名企業の説明会に行った時に、障害者雇用の種別図を見せられて知った)と言うところで間口が狭くなっていることもある。また私のスペックも問題だった。事務未経験とはいえ、特例子会社でのPDF作成やデータ入力といった定型作業のポジションでも書類だけでバンバン落とされた。スタッフ曰くオーバースペックなのではないかということだった。履歴書のスペックが華々しすぎる。見た目だけで言えば高学歴の大企業総合職経験者、資格持ちで、前職で花形の仕事をしていたので、定型作業だと飽きて続かないと思われているのでは、と(実際はめちゃくちゃ泥臭い仕事をしていたのだが)。どうせえっちゅーねん!という気持ちだった。
結局、唯一前職の経験が活かせそうな求人に応募し、低い待遇に高い成果を求められる矛盾の中で、他に行き場もなく今は働いている。障害があるからって簡単な仕事しか任せられないとは限らないよねという気持ちと、にしても一人暮らしもままならないような低賃金の非正規雇用でここまで責任や成果を求められるのかという葛藤の狭間。
障害者雇用は、ブルーカラーも射程に入れている人、事務経験がある人にはいいかもしれない。そうではない、精神・発達障害の、更に中年となるとかなりハードルが高い。だからと言って一般雇用でまたしんどい思いをするのも嫌だよね。どうせえっちゅーねん!
福祉だけで生きていけない以上、就労移行支援でリハビリをして、障害者雇用でなんとか金を稼いでいられる今の状況は、やむなし、というところだ。
就労移行支援や障害者雇用については、人を選ぶとしか言いようがない。検討されている方の参考になればと思って書きました。