GW #2 カフェ一番乗りの民に通ずる思い

夏木紬衣
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ゴールデンウィークはいろんなカフェに訪れた。

お客さんでにぎわう完成された空間ではなく、はじまったばかりの余裕のある空気感が好きで、開店時間にあわせて向かうことが多い。ゴールデンウィークは特に混みやすいこともあり、時間には気を使って行動した。

「カフェはできる限り開店時間にあわせて行く」というマイルールは、とある経験からより強固になった。

とある休日、気になっていた喫茶店へモーニングを食べに行った。その喫茶店の開店時間は7時だが、バスと電車を乗り継いで向かう距離なので、あせらず行ける9時着を目標に出発した。

予定通り到着すると、換気のためかドアは開け放たれた状態で、覗かずともうっすらとなかの様子を感じとれる。思ったより人の声が聞こえず、もしや空いているかもと期待したが、実際はほぼ満席でちょっとがっかりした。

通されたのは隅のテーブル席。テーブル席といっても二名掛けや四名掛けのテーブルではなく、壁に接地された大きな半円のテーブルに椅子が7つ配置されたもの。すでにご夫婦らしき方々が端に座っており、わたしは連れと一緒に反対側の端に腰をおろした。

トーストとサラダがのったプレートとコーヒーが運ばれ、モーニングタイムがはじまる。香ばしく焼き色がついたトーストをかじり、コーヒーをすする。おいしい食事をとれること、朝から有意義な時間をすごしていることで、満たされる感覚に浸った。

満員のバスと電車を乗り継いだかいがあったなと思いながらゆったりくつろいでいると、なにやら入口がガヤガヤと騒々しくなった。スポーツウェアに身を包んだ、大柄の男性5人がやってきたらしい。店主が「今は案内できる席がなくて」と話しているとき、嫌な予感がした。

同じ半円テーブルで食事していたご夫婦が気を使ってお会計へと進む。必然と5名はこちらにやってくる。休日の楽しみな時間が一転した。

元々ゆとりをつくらず配置された席は、大柄男性5人がやってきたことによって、肩がふれるくらいギチギチに。邪魔にならないようプレートもできる限りこちら側に寄せ、窮屈な状態で残りを食べ進める。ここからはまったくコーヒーの味がしなくなった。

意識しなくても5人の会話が聞こえてくる。どうやら5人のうち1人が喫茶店でコーヒーを飲むのが好きなようで、巻きこむように4人を連れてきたそう。

4人は興味なさげにメニューを眺め、各々コーヒーだけを注文。喫茶店好きのひとりだけがモーニングセットを注文したあと、黙々と食べはじめた。連れてきた身にもかかわらず、我関せずを突き通し残りの4人を放置している。案の定、喫茶店にもコーヒーにも関心がない4人は手持無沙汰のようで、チラチラと視線を投げてきた。

せめてスマホでもみていてくれと念じながら、やっとの思いでたいらげて早々に退店する。なぜ「5人」で「喫茶店に」行くという選択肢をとったのか不可解でしかたなかった。

気持ちのいい朝の時間をすごす予定が、最悪な時間になった。パーソナルスペースを害されただけではなく、意図のわからない不躾な視線にもこたえた。

思い描いた時間をすごせなかった理由を5人のせいにしてしまうのは楽だが、自分以外の誰かをコントロールするのはほぼ不可能。快適な時間のために、自分の行動をみつめ直すことにした結果「できる限り開店時間にあわせて行く」と決まった。一番乗りなら自由に席を選べるし、騒々しくなる可能性も抑えられる。

混雑しやすいゴールデンウィークにマイルールを実行すると、小さな「よかった」が重なった。

店員さんとゆっくり会話できる、オーダーが混みあっていないので提供が早い、豆を挽く音・ドリップの抽出音・店内BGMが心地よく聞こえてくるなど。開店時間にあわせて訪れる方はわたしと似たような考えをもっているらしく、周りに配慮しつつそれぞれの時間を大切にすごしたいという気持ちが行動に表れているように感じた。

隣同士テーブルの距離が近くてもジロジロとみてこないし、ささやかなボリュームで会話をしている。みえないパーテーションで区切られたかのように、確かにそれぞれの別空間が存在していた。

選ぶ場所と同じくらい、選ぶ時間によっても似たような人間が集まると気づいた。開店時間にあわせてカフェにやってくる人には、誰にも邪魔されず・誰かの邪魔にならず、ゆったりとすごしたいという思いが共通している。そして、いい1日をスタートするための、エネルギーチャージの場所としてカフェを選んでいるのも共通点だ。誰かのエネルギーを削る行動をしてしまわないよう、無意識に配慮しあうことで、居心地のいい空間へと昇華されるのだと思う。

@ym_kn
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