フルリモートで仕事をするようになって数年が経った。以前の通勤スタイルに戻る人が多いなか、わたしは今も家にこもりっきりで作業をするのが常。引き続き会社員でリモートを続けている人はどれくらいいるだろう。
リモートワークは通勤・出社嫌いの人にとって万歳! と大喜びする働き方だ。しかし、いざリモート環境に身をおくと、仕事とプライベートの切り替えがうまくいかない、家でリラックスできにくくなったという声も耳にする。
わたしは圧倒的に前者だ。パーソナルスペースが一1ミリも守られない電車通勤が続く毎日では、ストレスから解放されることはない。通勤は苦行だ。
ここ数年の自宅での働き方をふり返ると、そういえば仕事とプライベートの切り替えに困ったことがないと気づく。同じ空間で仕事とプライベートの時間をすごすのがあたりまえになり、ON・OFFのスイッチが勝手に機能するようになった。スイッチがうまく作動するには、いつもと同じ行動=ルーティンがカギになると経験から学んでいる。
仕事をはじめる前に必ず掃除機をかける。掃除機をかける時間がとれないときは、せめてデスク周りをクイックルハンディできれいにしておく。掃除している間に沸いたお湯でサッとコーヒーを淹れて座れば、すっかり仕事モードになっているのだ。わたしのスイッチは掃除によってパチッとONになる。
仕事は20時頃に切りあげるようにしている。すでに食事をすませているので、歯磨きをしたり洗顔をしたり、だんだんと仕事モードからプライベートモードに切り替わる。しかし、ただ仕事をやめただけではスイッチが完全に切り替わった感覚はない。
寝る30分前からライトを消し、キャンドルを灯す。本物ではなくLEDによる灯りだが、意外とリアルで炎より安全に使えるのがいい。寝るまでの30分間、ストレッチをすることもあれば、だらだらスマホをいじることもある。最後の自由時間だ。
寝る直前、キャンドルの灯りを消すついでにハンドクリームをぬる。ウッディな香りがふわっと漂い、安らぎながら目をとじる。ハンドクリームをぬって手先を軽く刺激することが、スイッチOFFの明確なトリガーになるらしい。
仕事とプライベートの切り替え、スイッチのON・OFFは、意図的ではなく自然と身についた。いつの間にかできあがった習慣によって気持ちが切り替わる。逆をいえば、ちょっとした習慣をつくることでスイッチが上手に切り替わるはずだ。特別なことは必要ない。
ルーティンにしてしまえば、選択によるエネルギー消費を節約できるし、なにより考える必要がなく、いつものことをすればいいのが楽だ。いつもと同じ行動をすれば、勝手に切り替わってくれる。ようは仕組みをつくるだけでいい。
最近の悩みは寝つきの悪い日があることだ。ホルモンバランスの乱れによってすぐに眠れる日もあれば、1時間経っても眠れない日がある。目をとじれば入眠のスイッチがONになる未来を想像しながら、スムーズな入眠を助ける習慣を模索中だ。