答えのない困難(ハードシンクス)とどう向き合うか、自戒の意味も込めて。
目次
心理的柔軟性を大切にする
コントロールできるものを把握する
「苦労した経験」の捉え方を変える
「苦労した経験」が大事なのではなく それをどう解釈したか
生存者バイアスがかかっていないか、負の歴史を再生産してないか考える
組織を濁らせる原因にならないために
ブリリアントジャークとダークトライアド
ピープルマネジメントこそ大切にする
ワークマネジメントとピープルマネジメント
ワークマネジメントの偏重による弊害
ピープルマネジメント基盤の未整備で発生する課題
「売り上げは全てを癒す」神話による崩壊
「成長ではなく、膨張の始まり。らしさの消失。」
マネージャーになりたい人が減る
マネジメントの言語化の罠
暗黙知の言語化
正しいマネジメント手法の作り方
歯車が狂い始める要因
マネジメントされる側が心得ておくこと
総括
備考
心理的柔軟性を大切する
まず大前提として自分のメンタルヘルスをコントロールする。
心理的柔軟性とは「自分の感情や考えに柔軟に対応できる能力」のこと。この解釈が正しいかはわからないけどそういう解釈をしてる。まずは自分の精神をコントロールできていたい。
心理的柔軟性を養うために大事にしたい考え方をまとめてみる。
コントロールできるものを把握する
コントロールできるものとできないもので切り分けることから始まる。コントロールできないものは受け入れるしかないので、コントロールできるものの対策に集中したい。
コントロールできるもの
対策を考える
→自分次第でどうにかできる可能性があるので集中して対処する
コントロールできないもの
一旦受け入れる
→どうにもできないので考えるだけ無駄
極端な例だが「雨が降る」という事象を用いると、雨が降る事象自体は自分でコントロールできないので受け入れるしかない。しかし「雨が降ったらどうするか」対策を考えることはできる。ここで「雨が降る」ということに対して責任を感じ始めたり、「雨が降る」事象自体を防ぐことを考え始めると、精神的に自滅していく。
「苦労した経験」の捉え方を変える
自分だけではなく周りのメンバーの心理的柔軟性を担保したりマネジメントする上でも大切な考え方。
かつて自分がされて嫌なことを他人に強要しないために大切な考え方。
「苦労した経験」が大事なのではなく それをどう解釈したか
まず「苦労した経験」自体が大事なのではなく、それにより「何を得ることができたか」を大切にしたい。
苦労した経験
技術的な経験もない状態で炎上案件に入った
毎日終電まで作業して家では勉強に努めた
結果として品質の低いコードを量産したがリリースはできた
得たこと
自分にできることに集中する大切さ(余計なことに首を突っ込まない)
案件内での立ち回り方やサポートの仕方
結果的に乗り越えられたという自己効力感
品質を担保することの難しさとその重要性
苦労した経験は過程にすぎず、そこから何を得られたかがその人自身の価値を作っていく。そこで得たものは反省や失敗も含めて糧にしていくことができる。経験を次に活かすきっかけを作ることができる。
生存者バイアスがかかっていないか、負の歴史を再生産してないか考える
かつて苦労した経験を正当化して「昔はこうだった」「自分はこう育ってきた」「これは必要な苦しみだ」「精神的に追い詰められた結果こそが強くなるきっかけ」と言って他人に強要してしまう(人材育成に取り入れてしまう)人は多い。これは人材育成は誰でも語ることができる特性から「自己流の育成理論」が横行することに加えて「生存者バイアス」がかかっていることにも起因する。
苦労した経験を積んだ人はやがて人を教育する立場になることが多い。その時に「苦労した経験から得たことに意味がある」ではなく「苦労した経験こそ意味がある」というマネジメントを行なってしまうと負の連鎖が発動する。教育された人間も「苦労から何を得たか」ではなく「自分も苦労したぞ」「自分も精神的に追い込まれた結果成長できた」といいう実績を得るだけになる。やがてその人も教育する立場になると同じようなマネジメントをする。これが連鎖して「苦労した経験こそが尊い」という神話が発生する。
「苦労した経験」をする上でメンタルがやられず、脱落しなかった人の生存者バイアスがかかっているだけにすぎない。たまたま教育方針が合致した人だけが生き残り、都合のいいメンバー構成になっていく。「生存者バイアス」は生強化されていき「生かせる人材の幅」が狭まっていく。
組織を濁らせる原因にならないために
マネジメント層がブリリアントジャークかつダークトライアドな振る舞いをするとだんだんと組織が濁っていく。
ブリリアントジャークとダークトライアド
ブリリアントジャーク
優秀だけど周りに悪影響を与える人のこと
ブリリアントジャークだけでもやばいが、そこに以下のダークトライアドの要素も加わると最悪。
ナルシシズム
他の人から立派な人・すごい人と思われたい!
サイコパシー
自分の行動が善か悪かに興味がない!
マキャベリアニズム
他人を騙したり操ってでも自分の目標を達成する、勝者こそ正義!
例えば、「上司の前で部下に指摘して自分マネジメントできますアピール」「メンバーが育たないことを自分ではなくメンバーのせいにする(メンバーが育たないことに対する自責の念がない)」「メンバーを犠牲にしつつ自分をよく見せる」ようなことを行なっていれば良くない。
こう言った人がマネジメントを行い、かつ会社がその存在をそのままにしていると、メンバーは会社や組織に対するリスペクトがなくなって離職する。
ピープルマネジメントこそ大切にする
ワークマネジメントとピープルマネジメント
マネジメントは大きく分けて「ワークマネジメント」と「ピープルマネジメント」の2種類ある
ワークマネジメント(目標達成機能)
行動管理・KPI管理系のマネジメント
教科書を読めば形式化できる領域なので導入しやすい
ピープルマネジメント(集団維持機能)
人材育成・組織開発のマネジメント
「愛やセンスじゃない?」に留まりがち
属人性が高くブラックボックス化している
ワークマネジメントがうまくいかない場合、ついつい型化されているワークマネジメントの仕組みを強化しがちだが、ワークマネジメントをうまく動かすかどうかはメンバー次第。KPIを進めるかどうかはその人次第である。ワークマネジメントを正しく作動させるためにはピープルマネジメントが重要になる。
ワークマネジメントの偏重による弊害
ピープルマネジメント(集団維持機能)が手薄になると組織拡大をしても組織トラブルに追われ続けて業績が伸びなくなってくる。
リーダーシップ行動論
pm型
成果管理も集団を鼓舞しまとめ上げる力もない
pM型
成果を上げる力は長けていないが集団を鼓舞しまとめ上げる力は強い
Pm型
成果管理などの手法で結果を出す力は強いが集団を鼓舞しまとめ上げる力はない
PM型
結果を出す力も集団を鼓舞してまとめる力も強く安心して任せられるリーダー
Pm型のようなワークマネジメント(目標達成機能)に強い人材はリーダー格に昇格しがちである。ワークマネジメント(目標達成機能)は形式化しているので伝承可能だが、ピープルマネジメント(集団維持機能)は「愛やセンスや飲み会」などの曖昧な手法でしか伝承されない。結果、ピープルマネジメントの存在が消滅してPM型リーダーを見なくなる。
ピープルマネジメント基盤の未整備で発生する課題
組織の人数が拡大しても人材育成の基盤が整っていないので、全員が一段落下の仕事に追われて事業に向かえる時間が減少する。「メンバーに任せたはずのマネジメントがうまく動いてないから自分がやるか、、、」「これって自分の仕事の範疇じゃないよなぁ、、、」など。
「採用を拡大すれば事業成果も拡大する」という比例式は発生せず、中にいる人材も上昇気流に乗れないので「キャリア安全性」が下がっていく。
さらに、「組織課題に悩む時間」が膨張して「事業や顧客に向き合う時間」を奪い始める。人間関係やコミュニケーション、離職しそうなメンバーの相談や、メンバーのメンタルヘルスの崩壊への対処に時間が使われる。
「売り上げは全てを癒す」神話による崩壊
「成長ではなく、膨張の始まり。らしさの消失。」
ここまでであげた良くない例が採用されている場合、その組織は「成長ではなく、膨張の始まり。らしさの消失。」が起こっている。
「売り上げは全てを癒す」神話をもとに業績拡大の裏で組織の歪みが拡大しているが「うちなら大丈夫」という正常性バイアスでテコ入れを行わない。そして優秀人材の離脱や残存メンバーの疲弊を起こして崩壊する。
崩壊するもののナルシシズムがあれば「やめたやつが悪い」「ついてこれなかっただけ」という発想になる。
マネージャーになりたい人が減る
「事業と組織の成長の間で憔悴したマネージャーの姿」を見ていると、マネージャーになりたい人が減る。
「コーチング」や「心理的安全性」の研修を重ねれば重ねるほど、手段が目的化してしまう。マネジメントは「現場」で起きているのに「現場と遊離した思想/手法」が生まれていく。
マネジメントの言語化の罠
エース人材や人事主導で「マネジメント原則」などを言語化すると「生存者バイアス」が加速する。
暗黙知の言語化
自分たちが正しいこと前提で言語化が進む。言語化されたものは「それが正しい」「正しくない」の概念切り取り効果があり、言語化されたものが正として扱われやすい。
正しいマネジメント手法の作り方
自分たちが正しい前提で進めない。変えるべき点と変えない点を見極めた上で「自社らしさ」を捨てずに、組織基盤を強化していく。
特定のマネジメント手法を一神教のように進行するのではなく、適切な時に適切なやり方を選択していく。
歯車が狂い始める要因
以下の要因が柔軟性を失わせて自己更新ができない状況を生み出す。
「自社は特別である」「業界注目の成功企業である」という慢心
「経歴に華がつくし優秀な人に見られるよね」という新入社員が増える
自社の方法こそ至高である!という盲目的な自社愛
人も組織も「成功者スタンスの自己語り」を始めた時
自分は成功者であるという自己洗脳から他人の意見を受け入れられなくなる
自分は成功者であるというペルソナから剥がれられなくなる
「成功は多様」だが「失敗は画一的」であるということに気づかない。(成功者スタンスも画一的な失敗の1事例)
マネジメントされる側が心得ておくこと
組織はみんなで作るもの
リーダー以外のメンバーも主体的に関わっていくことが重要
マネジメントは新入社員でもできることある(逆に新卒の方がアンラーニングがないためかマネジメントに関する解像度が高くなることがある)
それを発動させやすい状況を作るのはリーダーの仕事
ピープルマネジメントは各々が行う
総括
人は組織はそもそも複雑である
正しいマネジメント方法を取り入れる
自己流自社流のマネジメントはやめる
成功者スタンスや盲目な自社愛はそれを阻害する
本当に時間と費やすべきは組織改革ではなく事業や顧客に対して時間を使うべき
そのほうが社会は良くなるし本質的
社内のいざこざを解決するために割いている時間を顧客や売り上げのために使うべき
〇〇社流みたいなマネジメントは疑ってかかる
銀の弾丸はないので地に足ついた方法を取り入れる
明るい側面、暗い側面をちゃんと見る