ゆびさきを信じている

よん
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公開:2026/1/7

あっという間に年末年始の休暇も終わって、慌ただしい毎日が帰ってきた。休暇の間は、どこかで早く毎日に戻りたいと思っていたものの、実際に戻ってきてしまうとやっぱりまだ休暇の中にいたい気がしてどこまでもわがままである。

3週間ごとの表示にしている仕事用のカレンダーは、一度めくればもう2月の頭がひょっこりと見えていて、2026年もすでに待ってくれないのではないかと思ってしまう。何かをしたいけれど、荒波のなかで船を漕ぎ続けるような日々に疲弊して、きっと何もできずに終わってしまうのがとても怖い。焦る気持ちはあるものの、ここからどう切り抜けていいかわからないのだ。ふと見ると、2月9日のところに「HAPPY金之助DAY」の予定が終日で入っていて、しばらく戸惑う。金之助って誰なんだ…と思ったけれど、これは去年の12月19日に私が自分で入れていたものだった。夏目金之助。またの名を漱石。点と点が繋がって、自分で入れた(そもそもそのカレンダーは自分しか見れないようにしているので、誰かが追加することはできないのだけれど)ことを思い出して「そういえば」と読むタイミングを狙い続けている本を手に取る。表紙側のそでにあるプロフィールを見て、今年が没後110年にあたる年であるということに気がつく。

ずらりと並ぶ全集に分類される本が並んだ棚から手に取った一冊。夏目さんのほかに、ラフカディオ・ハーンと正岡子規の名が並んでいる。100年の時を超えても、なお私の中でホットな人たちの作品がまとめられていて、あまり迷わなかった。返却期限は今週の土曜に迫っているけれど、まだ読めないでいる。この前少しだけ、夏目さんの冒頭を少し読んで「これはきっと好き」と思ったので、落ち着いて読めるタイミングを狙い続けている。もうあまり長くはないけど、ここからが本番である。

⬛︎子規の足跡を追って

12月は3週間ほど週末仙台市民をしていた。ライブにイベントに、誰かに会ったり、どこかに行ったりして、自分でも驚くくらいのアクティブな時間を過ごした。その最後に向かったのが松島である。年末恒例になりつつある松島旅行。今年も仙石線に揺られて、松島海岸駅へと向かった。

去年は「松島ってどんなところ?」という大きな疑問符があったから、観光名所をめぐってみようとか、遊覧船に乗ってみようとか、海があるから波の写真でも撮りつつ潮風を感じてこようみたいなところがテーマとしてあったのだけれど、今年は特段そういうものもなく、去年迷った末に食べなかったお団子やほやを食べたいなあぐらいで向かうつもりだった。そのとき、正岡子規が松尾芭蕉の足跡を追って松島に行ったことがあるというのを知った。それからは早いもので、それが「はて知らずの記」という紀行文であることを知る。手元に『子規紀行文集』を置いて「今年はこれをもとに、子規が見た景色を探しに行こう」と決めた。12月を慌ただしく過ごしていたこともあり、紀行文の中の子規よりも先に仙台に入り、子規が福島より北へ向かうのをいまか今かと待ちわびながら紀行文を読み進めていく。一日の小休止の後、松島へたどり着いた子規は、私が驚くほど生き生きと文章や詩作にふける。

当日も、松島海岸駅からぶらぶらと歩いて、たどりついた市場らしいところでまぐろ汁を飲んだり、去年気になったプリンのリベンジをしたりした。(今年の松島旅行のサブテーマは「去年食べなかったものを食べてみる」なので、いろいろ食べた。この他にも、ほやの唐揚げ、あんバターのイエティみたいなお団子にお煎餅。ぽつぽつと食べて良い一日でした)

五大堂のところで子規が「俯けば水を覗(うかが)ふべし」と書いていて、私もあの透かし橋を渡りながら足元を見てみる。いつもより近い水の気配にどきどきする。そして、前を歩く人が橋の最後で足を滑らせていてさらに怖くなる。けど、渡ってから「俯けば水を覗ふべし」はこれだったんだと思って、およそ100年の時を超えても似た景色があることを嬉しく思った。去年行ったときは補修工事をしていた記憶があるので、こうして限りなく変わらない形で存在していることがたまらなく嬉しい。

そして、もうひとつ「雄島、五大堂を左右に控へ、福浦島正面に当り〜」という部分を見にそれらしいところを探す。ぽつぽつと歩きながら「きっとこの辺かな」という景色を見つけ、このテーマを選んでよかったと思った。長い時を超えて、同じ景色を見ているのかもしれない。同時にこの場所を歩いた子規だって、芭蕉と同じ景色を見ていたのかもしれないのだ。年の瀬の松島には、光を反射してきらきらとまぶしい水面と日差しを受けてマフラーも必要ないほどの暖かさがあった。ただここに立って息を吸って吐いて、自由に歩き回ることがこんなにも自分にとって幸せなことだったのだと改めて確認できたのにも、松島に来た意味がある。

私がうっかり遊覧船に乗って海の景色を楽しんでいたばかりに、今回は瑞巌寺も円通院も閉門の時間になっていたけれど、これもまたひとり旅の醍醐味だろう。誰かと一緒だったら確実に気まずい空気になってたと思う。これはまた次の機会へのお楽しみとします。

⬛︎ゆびさきを、信じている

最近、もう自分の中には何も残っていないのだと常々思っている。まだできそうな気持ちがありつつも、気を抜けば空っぽになっているような気がするのだ。けれど、年末の旅行から帰ってきたあと、溜めていた1か月半分の日記を書いて、白いページにペン先を滑らせていたらいつもより息がしやすくなっていたように、自分にはまだ書きたい気持ちも、書きたいことも残っているのではないかと思う。

それは、白いノートを前にするときも、ポメラやPC端末を前にするときも一緒で、二つ折りになったものを開いて、キーボードに指先を置いたら、頭の中で眠っていたものが指先から形になって現れてくるのではないかと思うのだ。それまで、どんなに自分は空虚な状態であると思っていても、指を置いて、一文字、二文字と打ち込んでいくうちに、文字は言葉になり、文章になっていく。そのぽつぽつとした音の波の中で、私は水面に爪先をつけて水の中へ入っていくように、文字、そして文章の海におぼれていきたいんだと思う。自分のうつわからあふれていく日常を「あふれているね」と見つめて、自分が書く時間から離れてしまっているだけで、文字の海でとりどりの色をながめていたいのだ。読みたいし、書きたい。

この前にうつむきながら歩いていたら、地面に星なのかヒトデなのかわからない模様を見つけた。そのとき、好きな音楽を聴きながら自分がどうして書いてるのか、そんなことを考え始める。私はおしゃべりが下手だ。人前でうまく喋れない。これまでの私もちょうど今の私も同じで、うまく喋れないから一線を引いた場所でこうして書いたり、何かを作ったりしている。書き始めて、何かを形にすることによって、自分が形にしたものをいいねと言ってくれる人が、自分も含めて存在しているということに気がつくと、暗かった世界に光が灯るような気がする。「全部辞めちゃいたい」(この場合の全部はほんとうに仕事も趣味もぜんぶひっくるめての「全部」なわけなんですけど)と思っても書くことや何かを表すことからは逃げられないのだ。

だから、今日もゆびさきを信じてこの編集画面を開いた。今まで形になっていなかったいろんなものが、ぽつぽつというキータッチの音と共に目の前に現れる。確かに楽しい。私の中にまだ、楽しいという気持ちが残っていて安心する。

⬛︎今週のネイル

今週は、なんとなく赤いゆびさき。松島に行く途中、仙石線を多賀城で降りた。多賀城駅のすぐそばにある多賀城図書館に行きたいと思ったからだ。本当はここで朝ごはん的なものをと考えていたのだが、「今日火曜日だよ」という一言でまた私はスートクの引力に抗えず、喜怒哀楽を刻んで煮込んだような少し辛いスープを食べてしまったのでほんの少し寄るだけになってしまった。久しぶりに行ってみようと思ってふらふらと入ってみる、で、そこで出会ったのがコゼットジョリのネイル。いろいろ見て、でも深い赤のカラーがひとつあってもいいだろうということで【ひいらぎだてすがた(HIIRAGI DATESUGATA)】をお迎えした。

なので、今週のネイルはコゼットジョリの【ひいらぎだてすがた】。これをメインに据えつつ、差し色でネイルホリックのGD028(たぶん!)とちふれの049。塗り終わったときは「ちょっと派手すぎない?」と思ったものの、3日ほど経った今ではすっかり馴染んでいる。赤に金色を合わせるのが個人的に1月の感じがして良い。昔からお正月が苦手で、年末年始も限りなく通常通りの日々として過ごしているけれど、このくらいだったら大丈夫らしい。私の指先にも年始が来た。おめでたい。

めずらしくフットネイルも仕込んでいて、これは【ひいらぎだてすがた】のワンカラー。誰も見ない、自分しか見ない部分ではあるが、うつむいた時に爪に色が乗っているというのは少し元気が出る。

5月くらいから毎週変えているネイル。これは単純に私が飽きるのと、1週間ぐらいがちょうど綺麗なので、毎週変えているのだが、けっこういい。おかげさまで、私は15分ぐらいあれば、自分が思うベストな長さに整えられるようになった。履歴書には書けないし、自分の爪しかできないけれど、特技になりつつある。色を落として、整えて、塗る。乾くのを待ちながらキーボードを打ったり、リズムゲームに興じるのがなかなか楽しい。

ネイル周りの話は近々買ってよかったものの話でnoteに書きたいな〜と思っている。書く前に春になりそう…。2025年買ってよかったもの堂々の1位はポメラでした。2位はパンダのクッション(パンダさんとお呼びしています)。3位はネイルズインクのトップコート、ベースコート。

だいぶ満足したので寝ましょう。また明日からもゆびさきを信じてキーボードに指を置きます。

@yon8_hakka
日記を書いています。 lit.link/yon8hakka