カメラロールを見返していたら、ちょうど一年前の今日、友人と初めてのセブンティーンアイスを食べる会を開催したらしい形跡が残っていた。この日はめずらしく午前中からカフェで手帳を書いていたら友人から唐突に連絡が来て、おしゃべりをしながらアイスを食べて解散した日。「もうそんなに…」と少しだけ複雑な気持ちになる。
その前の日に近年稀に見る落ち込み方をしたこともセットで思い出した。わたしがあまりにもふわふわとした人生を送りすぎている(これは年齢的に見て、わたしがあまりにも異端すぎる)ということが親戚の間で話題になっていることを人づてに知って、まだわたしの中にみんなと同じ人生のステップを踏んでいくべきという気持ちが少しでもあった頃だったから、知らないぐらい泣いた。泣いても泣いてもどうにもならなくて、Bialystocksの3枚目のアルバム「Songs For Cryptids」に助けを求める。泣き疲れて目を閉じるときにちょうど流れていたのが「憧れの人生」だった。完全に暗くした部屋に風のような音楽が流れる。傷口に塗る軟膏みたいに、ひんやりとした感触があったあと、じんわりとあたたかくなっていく。今ならわかるけれど、なんとなく雰囲気で形成されている「普通」や「あたりまえ」の境界線から一歩外に出てみたら、ものすごく楽しい。視点をぐい〜っと後ろに引っ張っていくと、どんどん視野が広がっていく感覚がある。そうして、今まで見えなかったものたちをじっくり見ていくうちに、自分が持っていた当たり前や普通が虚像だったことに気がつく。それから長い時間が経ってからいろんな情報を並べて改めて考えてみると、点と点がつながって、腑に落ちていくのがおもしろい。
と、そんなことまで思い出してしみじみしてしまったのは、10月1日がKIRINJIとBialystocksの対バンのチケット発券日だったからです。その節はありがとうビアリ…これからもなにとぞ…!というわけで、今年もなんだかんだ音楽の毛布に包まれた日があったなあと思ったので、音楽を軸にした日記を書きます。
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9月29日 All Too Soon/Bialystocks,nestling/KIRINJI
「そろそろ10月なんだな」と思ったとき、頭のどこかでは「そろそろ対バンだな」とも思っている。思えば今年の単独公演も2人編成ツアーもまったくチケットが取れなくて「まあこれ落ちてもいいです」ぐらいの気持ちで申し込んだのがこの対バン。KIRINJIも好きだしビアリも好きだし損はないでしょうとのことで、申し込んだはいいものの、本当に当たるとは思わなくて、一回考えた。けど、せっかくだし行くことに。楽しみすぎる。ので、「今週は予習も兼ねてたくさん聞こう〜」と2人編成ツアーのセトリプレリスとビルボードツアーのセトリを聴く。ビアリもKIRINJIもどっちも好きなんだ結局。
9月30日 あわいに/TOMOO,赤黄色の金木犀/フジファブリック
朝早めに起きた。平日は朝と夜に1時間ぐらいずつ曲が流れるようにしている。朝は起きて、ぼやぼやしてていい合図。夜は寝る時間の合図。この日最初に流れたのはTOMOOの「あわいに」。二度寝でもしちゃおうかなと思ったけれど、そのまま読書。秋めいてきたとはいえ、昼頃はまだほのかに暖かい。夏の気配とまではいかないけれど、部屋の温度を調整するために窓を開ける。北側にある窓を開けると、どこかから金木犀の香りがして、「もう花火の季節じゃないんだな」と思った。とはいえ、秋の感触に思ったよりも喜んでいる自分がいて本来志村が書いた歌詞の意味とは違っていそうだけれど、これも「期待外れな程 感傷的にはなきりれず」だなあとぼんやり思う。空気の中にある金木犀の香りにもっと包まれていたいけれど、このくらいがちょうどいいのかも。この香りもいつかの間に消えて、冬がやってくる。無慈悲なほどに2025年は速くすぎていく。
10月1日 TEAM ROCK,LV30,ハム食べたい SCHINKEN,ブレーメン/くるり
朝の読書時間で『アルジャーノンに花束を』を読みきった。読み切った時はなんとなくチャーリイの希望が感じられてわたしもあたたかい気持ちになっていたのだけれど、冷静になって考えてみたら感情の置き場がわからなくなってぐちゃぐちゃのまま泣いてしまった。チャーリイが残した最後の経過報告は、ウォレンを見学したときよりもずっと、彼がこれからの生活に希望を持っていたように思えた。けれど、それはもっとたどっていくと違っているのかもしれない。わたしはそう思っただけで、実際のところは違うのかもしれない、なんてことを思ってわからなくなる。もっと、こう、ずっしりくるタイプの小説だと思っていたから、自分が一時的にでもあたたかなものに包まれているような感覚になるのは意外だった。その意外さにも戸惑いを隠せないでいる。という水曜日はくるりの日。KIRINJI強化月間をしていながらも、不意にくるりが聴きたくなる。心地の良い転がり加減、好き。
10月2日 Where's SummerB.?/ベン・フォールズ・ファイブ
武道館で流れていた会場BGMの流れでGingerを聴くとあの時の記憶が蘇ってきてとても良いというのを発見した。世紀の大発見。なので、その流れでベン・フォールズ・ファイブとVulfpeckを聴いている。言葉のわかる曲を聴きたくないときとかにもとても重宝している。仕事部屋が心なしかいい感じになる。で、これを聴きながら次の名刺のことを考えていた。もともと名刺は似たデザインで配り切ったら新しい紙とインクの組み合わせで遊ぶつもりで作っている。今の名刺はミランダの藍に白インク。静けさもありながらきらきら輝いているところが好き。次はマットめの白い紙にパキッとした蛍光ピンクがいいな〜と考えている。のだけれど、ベン・フォールズ・ファイブを聴きながら思い切ってもっと文字文字しいバチバチのものにしようかなと思った。Impactとかごりごりに使って派手にしたい(デザインまわりの話する時擬音が増えるのはなんでなんだろうね)
10月3日 Drifter/キリンジ,非ゼロ和ゲーム/KIRINJI
引き続き、KIRINJI強化月間をしている。ビアリはもうずっと聴いているので大丈夫だとしても、KIRINJIをあんまり聴いていない。「Steppin'Out」が好きだな〜とふわふわ思いつつ、過去のも振り返りつつという感じ。なので、ライブのセトリをいろいろ聴いている最中なのだけれど、ビルボードツアーのセトリを聴いていたときになんだか気になってしまった曲がこれ。どれだけダメでも、もう少し大丈夫かもしれないと思う曲なのかも。その余韻でぼんやりしていると、聞こえてくるのが非ゼロ和ゲーム。この強化月間のついでにチケットを発券してくる。いよいよ迫ってきている感じがしてどきどき。オールスタンディングのライブに行ったことがないので少し不安もある。お昼休みに外に出るついでに少しドライブをしていたのだけれど、不意にZINEフェスのことを振り返って「たしかに文化祭っぽかったな…」と思った。そう言いつつ、実のところわたしは文化祭にちゃんと参加したことがないんですよ。昔、文化祭のときに激しめのロックバンドのライブがあったこと、開始3分もしないうちに怖くなり耐えきれず保健室に避難したことを思い出して、人生何が起こるかわからないなあと思うなど。(泣き止んだぐらいのタイミングで担任の先生が来て「あれはちょっとねえ」と言っていたのを覚えている、なぜか。)
10月4日 반딧불(Little Light),A little more/DOYOUNG
ありがとうドヨンさん、いい歌です。日がなぼんやりしていて、もう日記もなにも手につかないなあと思ったので、早めに運動をして寝る準備をした日。昼間もダメだったけれど、19時をすぎたころからいよいよもうダメですの気持ちが強くなってくる。いつもよりテレビの音が騒がしく、その中で行われていることがものすごく遠くのことのように思えたので、20時半ごろに「明日4時ぐらいに起きるね」と高らかに宣言して寝ることにした。もう全部ダメの状態になっているので、早めに部屋を暗くしてなるべく暖かくして寝るのだけれど、無音でもなあと思って助けを求めたのがドヨンさん。最近はあまり出番がなかったけれど、「だめだ〜」の状態になっている時にはドヨンさんの声が効く。自分用に作ったドヨンさんのプレリスも2時間半ぐらい再生したら止まるのが助かりポイント。暗い部屋に音楽をかけて、文字を追う。この日はしょうゆさんの『もこの記』、たけのこスカーフさんの『私のケア帳』、石田衣良『空は、今日も、青いか?』、モーリス・ルブラン,榊原晃三(訳)『怪盗ルパン』をすぐ手の届くところに置いて、順番に少しずつ読んだ。活字を読んでいると、文字なのにこの世界に一人ではないような気がして安心してだんだん眠くなってくる。ドヨンさんの歌の「〜なら」とか「大丈夫」という知ってる単語をふわふわ掴もうとしながら、そのまま音に包まれるように寝てしまう。眠る直前にひのきのホットアイマスクをつけたら完全にあたたかな物たちに包まれていい感じになった。途中起きて一瞬だけソシャゲをしたけれど、そのまま、次に目を覚ました時には9時だった。12時間ぐらい寝たことになる。途中、とても好きな歌があったと思ったのだけれど、あれが何だったのかはまだ思い出せない。
10月5日 Universe/EXO,Back To You/WayV-KUN&XIAOJUN
いよいよ本格的に秋めいている。日曜の朝起きて、いつもよりいい目覚めだなあと思いながら、ドヨンさんの掛け声レクチャー動画を見る。ドヨンさんがご自身で解説してくれる動画のおかげで、Little Lightは謎に掛け声が完璧なんですよと思っていたら2曲目で思いっきり予備校のそれになってて面白い。面白すぎる。引き続き、日本語を聞きたくないよの時期が来ていることを感じながら、カフェで手帳合宿をする。横の机に居合わせた二人組の片方が高圧的に見えてマジで嫌すぎるなと思ってイヤホンの音量を上げる。スホさん、そしてギョンスのソロアルバムを聞いていた流れでEXOのUniverseを聴く。冬の入り口に聴いて季節を前に進めたくなるアルバム。夜が長くなってきた今だからこそ、ふと見上げれば星があるし、宇宙をより近くに感じられるのだろうか。ロイヤルホストのコスモドリアにだって秋の味覚の代表格、栗が入っている。カフェでそれなりに手帳の作業を進めた帰り道に「ドヨンさんもだけど、きっとチャイナラインも睡眠導入にいいと思う」と思って唐突にBack To Youを流し始める。歌がうまい。「もしよかったら今度ボーカルのチャイナラインで何かしませんか」と思ったらもう「蓝洋海龟 (Marine Turtle)」があった。
おまけ!10月6日 アジカンありがとう〜〜!
今日(もうすっかり日付が変わってしまったので、きのう)のハイライトはアジカン。久しぶりにプラネットフォークスを聴きながら作業をした。進捗のところはこれ以上ないはなまる。じわじわ盛り上がってからの「地名だけが古いままの新しい地図」好きすぎる。「解放〜!」も一緒にちゃんと盛り上がってしまう。アジカン、もっと違う形で出会っていたらどんな出会い方をしていたんだろう。そんなことを思ってしまう。でも、ずっと音を鳴らし続けていてほしい。私の好きな音を鳴らすひと、みんなも。
明日早めに起きようと思っていたのに、すっかり夜更かしになってしまった。待つことに対してもキャパシティがあること、それは時にあふれて自分を苦しめることを痛いほど突きつけられた一週間でも、すぐそばに音楽があり、それを奏でる人がいること、それと、何かを書き残す人がいることに助けられた一週間だった。今週もまだまだ始まったばかりだけれど、先週よりは肩の力を抜いて、秋の気配の中で漂うことができたらいいなと思う。