子供のころは、バナナがほんとうに好きじゃなかった。けれどわりと頻繁に朝の食卓に登場し、いやいやもそもそと食べていた。特に食欲のない時などはどうしても「おえっ」としてしまってバナナ好きな母は「なんでよ」というふうに顔をしかめた。そんな顔をされてもわざとじゃないんだからどうしようもない。
火の通ったバナナはなぜか美味しいと思った。バナナを潰して生地に混ぜ込んだホットケーキはふわふわ軽やかだったし、給食で出てきたバナナのフリットは甘やかな香りと酸味が衣の油っ気と重なり合い子供心に魅惑的だった。
大人になった今は、生のままでも時と場合によっては好きになったと言える。銀座ウエストのバナナサンデーを食べたときには、バナナってこんなに美味しいの…?!と衝撃を受けた。食感がもそもそせず、もっちりとさえしている。気品ある風味のそれをうやうやしく平らげ、やっぱり高級バナナは違うのか…と唸った。まあそれは別格としても、なぜこんな話を書いてるかと言えば、今朝食べたバナナトーストが美味しかったから。高山なおみさんの本で読んで食べてみたくなり真似してみた。山型食パンを焼いてバターを塗り、バナナを乗せたら蜂蜜をかけてむんずと包むようにして大口開けてあーんといただく。おいしい。不思議だ。温かく香ばしいパンに挟まった、ほんのり冷たいまるごとバナナ。バターと蜂蜜は絶対にないとだめ。好きなバナナの話。最近は輪切りにしてヨーグルトをかけたバナナも、好きだなあ。