これは4/3の日記。を4/5に完成させたもの。

今日(こそ)大学のガイダンスの日だった。あいにくの雨。えらく分厚くガチガチな雨合羽をはおり、ヒィヒィ言いながら大学まで自転車をこぐ。家から大学まで。自転車で約20分かかる。雨だからかふつうに寒い。

 教室に入ると、先に座っていた知らない人に手を振られた。それに若干キョドりつつも、かるく挨拶をして席に座る。実は知っている人だったりするだろうかと思案してみたけれど、やっぱり知らない人だ。最初はその人と僕しかいなかったけれど、20分くらい経つと、ぞろぞろと人が入ってきた。人がたくさんいる場所に身を置くのは久しぶりのことなので、からだがこわばる。人、こわい。

 時間になり、ガイダンスが始まる。資料を見てみると、やはり学生自己紹介の項目があった。そうだよな、自己紹介しなきゃいけないよな...。落ち着かない気持ちで資料を読むでもなくパラパラめくる。登壇して説明している教授は1年生のときから知っている方だけれど、なんだかずいぶん老けたようにみえた。

 それぞれの説明が終わり、ついに学生自己紹介にうつる。博士後期課程から、博士前期課程、次は大学四年生以上...僕は休学期間も含めると今年で学部六年生なので、ここで名前が呼ばれるはずだ。どきどきして頭の中で自己紹介のシミュレーションを繰り返す。...「大学四年生以上はこれで最後ですかね。次、大学四年生、えーと、〇〇さん」...あれ?僕の名前は呼ばれなかった。もしかして、休学期間だから自己紹介はなし?...どうやらそうみたいだった。結局最後まで、僕の番がまわってくることはなかった。

 なんだかんだでガイダンスも終了。自己紹介しなかったことに安堵する気持ちもありつつ、せっかくきめた覚悟が無駄になったような気がして残念な気持ちもあり、心中複雑である。担任である教授に授業が行われる予定の教室をきき終わり、さぁ帰ろうとしたところ、隣に座っていたひとに声をかけられた。

「〇〇さん?覚えてる?ちょっと話したことあったよね...」

え?誰だろう。ブンブン思考を巡らせて脳みそのすみずみまでその影を探す。...あ、もしかしてこの声、Mさん?ずいぶん髪型が変わっていたから全然わからなかった。そうだとすれば1年ぶりくらいの再会になる。若干パニクりつつ、必死で笑顔をつくる。

「はい、〇〇です。お久しぶりですね」

「怪我したって聞いてたけど...」

あ、そうだ。研究室の発表会をサボるために、事故にあったと嘘をついたのだった。Mさんは参加していなかったはずだが、そこまで話がまわっていたのか。脳みそをフル回転させ、ひっしにありもしないことを並べ立てる。

「はい、そうなんです、助手席に乗っていたんですけど、骨折しちゃって、利き手だったんで、今日Mくんに謝りたかったんですけど、もういなくなっちゃってて、残念っていうか」

「ん?Mくん?」

「え?えっと、あそこに座ってた...」

「あ、Mくん?Mはぼく。あそこに座ってたのはNくん。」

しまった。名前を間違ってしまった。顔から火が出そうになるが、必死になにも恥ずかしくなんてありませんよ、というふうに取り繕う。

「あ~!そうそう、NくんNくん。Nくんが主催してた研究発表会に事故のせいで出られなかったので、謝りたかったんです。」

「なるほどね、実は僕も今年事故して、骨折したんだ」

「え~!そうだったんですか!」

そのあとは相手の話をうんうん聞いていたのだが、正直名前を間違ってしまったことが気にかかりすぎて意識は上の空になっていた。

「それじゃあまた」

「はい!お疲れ様です」

逃げるようにして教室を後にする。名前を間違ってしまったことで頭がいっぱいで、思わず「死にたい」と声が出てしまう。恥の感情をかき消すためにとにかく足を動かす。

...この出来事があったのは二日前、いまは4/5だ。だからこのあと何をしたかよく覚えてないのだけれど、感情が大荒れだったことはよく覚えている。この恥の感情のみにとらわれていたので他のことに気が回らず、学生証を図書館に落としたりした(現在無事回収済み)。ぼくは自分の失敗に敏感で、すこしのやらかしでその後1日をだいなしにしてしまうほど気が弱い。さらにぼくにはADHD(不注意優先)の傾向があったりして、こういうときは特に顕著にその特性が出るので、本当に気をつけなくてはならない。2日経ったいまとなっては、別にどうってことないじゃないか、人の名前間違えたって、そういうときもあるさ、と思えるのだが、その時は地球が割れるほどの大失態に思えたのだ。

 恥の感情を過度に恐れるぼくの性格、正直どうにかしたい。だって間違えることなんて、生きてたらつきものだから。いちいちパニクってたらキリがないし、自分のメンタル健康にもよろしくない。恥の感情とどう付き合っていくかが、今後の課題である...。