
赤と青とエスキース/青山美智子/PHP文庫
ひとつの絵画から始まる連作短編集。
この物語で紡がれるのは瞳を開けたまま見る夢だ。こうありたいと願う夢、こうだったら良いのにと望む夢。その夢と眼前にある現実とのギャップに苦しんだり、落胆したり、人生はままならない。だけれども思い描く夢は実現への「エスキース」だ。「エスキース」は少しずつ形を変えてその人の前に立ち現れる。何度も、何枚も、描かれ、重ねられ、彩られ、時には白紙に戻って。誰もがその胸の裡に秘めている人生の「エスキース」。
本作に登場する自分達がそれぞれ抱えている夢の「エスキース」が結実していく過程はとても感動的。まさに人生は多彩な色彩を持った絵画のように。
素晴らしい作品でした。