
寝煙草の危険/マリアーナ・エンリケス/国書刊行会
寝煙草の火で老婆が焼け死ぬ臭いで目覚める夜更け、庭から現れどこまでも付き纏う腐った赤ん坊の幽霊、愛するロック・スターの屍肉を貪る少女たち、死んだはずの虚ろな子供が大量に溢れ返る街……表題作含む12編収録。
どれも不気味さと不穏さが漂う絶品ゴジカルホラーで楽しめました。中でも一番好きなのは人の心臓の音にエクスタシーを感じる女性の話「どこにあるの、心臓」。健康な心音から複雑な病気を患った心音までひたすら聞いて快感に耽る様子は奇妙かつ耽美ですらある。
彼女は心臓病を患う男に様々な薬を与えて様々な心臓の音を聞こうとする。その終局は直に波打つ心臓に触れること。破滅的で救いのない終わり方もまた素敵。
文学界のロック・スター、ホラープリンセスことマリアーナ・エンリケスの作品をもっと読んでみたい。