
死神裁判/ヨハネス・デ・テプラ/現代書館
中世末期に書かれた、妻を死神に奪われた農夫が裁判を起こし、死神から亡き妻を取り戻そうと奮闘する物語。書物の類はラテン語で書かれていた時代に初めてドイツ語で書かれた散文でも本作は翻訳が良いのもあって思った以上にユーモラス。
農夫はどれだけ妻が立派だったかをこれでもかと説き、死神に怒号を浴びせて妻を返して欲しいと懇願する一方、死神は冷静に時には皮肉をもってどんなに素晴らしい人物であっても死は免れないと農夫に告げる。
ペスト、戦争、飢饉など現代よりも死がずっと身近だった時代、「メメント・モリ」「死の舞踏」の先駆的な作品として一般市民に読まれたのはとても興味深い。
神が判決を言い渡すのだが、これには納得。
多くの挿絵(版画)も当時の雰囲気を伝えるものとしても貴重。
楽しく読みました。