
十二の遍歴の物語/ガブリエル・ガルシア=マルケス/新潮社
12編収録した短編集。どの話もとても面白く読んだ。マルケス流の不条理が満載された物語はクスッと笑えるところもあれば、一体どうしてこんなことに……と予測できない悲劇的な結末もあり、一編一編が短編小説とは思えないほどの濃密がある。
「眠れる美女の飛行機」はタイトルから推察される通り、川端康成の「眠れる美女」から着想を得て書かれた作品で川端康成ファンとしても楽しく読んだ。
死後、遺体が腐らずその重さもない娘の体の聖別を求めて二十年以上、法王の謁見を求める男の話「聖女」や移動中事故を起こしてしまった女が電話を借りたいと乗り合わせた車がまさかの精神病院行きでそのまま収容されてしまう「電話をかけに来ただけなの」は実にカフカ的。
厳格な家庭教師を殺そうと画策する兄弟の話「ミセズ・フォーブスの幸福な夏」のラストは本当は一体何があったのか謎めいた余韻があって良い。