悪魔物語・運命の卵/ブルガーコフ

夜雨
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公開:2025/10/7

悪魔物語・運命の卵/ブルガーコフ/岩波文庫

舞台は1920年代のモスクワ。

「悪魔物語」では事務員コロトコフが些細なことから馘首を言い渡され、身分証を無くしたところに分身が現れるという話。身分を証明しようと奮闘するコロトコフは延々とタライ回しにされるのだが、次第に日常から離れて幻想が入り乱れていく様は読んでいて楽しい。

「運命の卵」は動物学者ペルシコフが繁殖力を増す不思議な赤色光線を発見し、それを生物の卵にあてたところ、大惨事を招くというブラックユーモアたっぷりな話。

どちらもロシアの官僚制度を痛烈に皮肉る話で、お国柄が垣間見える。特に「悪魔物語」はどこかカフカに通じるものがあり、コロトコフに降りかかった不条理な災難は哀れとしか言いようがない。

「運命の卵」の後半の阿鼻叫喚な世界は怪獣映画さながら。どちらの話も楽しく読みました。

@yosame0619
一次創作/二次創作/字書き/30↑/三度の飯より本が好き