今まで騙しててごめんね。実はわたし、天使なんです。
「羽生えてないじゃん」って思ったでしょ。天使に羽があるなんて決まってるわけじゃないですよ。原始キリスト教の時代には天使に羽はなかったんです。どうやらローマ時代にエロース=クピードーやニーケーのイメージが混ざった結果らしいですね。はい、なのでわたしには羽がないです。
「っていうかそもそも人間でしょ」いえ違います。わたしの姿はあなたたちがわたしに見出したい姿そのものです。人間に見えるということは、つまりあなたがわたしを人間として見ているというだけのことであって、本当のわたしを見ているわけではないのです。
というか、わたしに「本当の姿」なんてものはないのです。イメージとしては光を放つ球体みたいな感じですかね。これすらもある断面ではそう見えるというだけですけど。
天使の役割は決まっていて、基本的に「御使い」です。天の使いね。天の意思を人間に伝える役割です。あ、はい、そうですよね。わたしがなんのために遣わされたか気になりますよね。
身もふたもないことをいうと、わたしの場合あんまり皆さんにお伝えすることがないんですよね。「人は理由もなく幸せを感じていいんだよ」という言葉を伝えることがわたしの役目なので。でもさほら、みんなわたしの姿を見て「ああ、なんか幸せだなあ」って思うじゃん。もうそれだけでわたし役目を果たしてるんだよね。楽な仕事だよねまったく。
……ええ? あなたわたしを見て幸せな気分にならないの? マジで? あなた可哀想な人だなあ。
仕方がないわね、あなただけに特別メニューを施すからね。これで幸せになれなかったらあなた本当に救われないからね。覚えてらっしゃい。
さあいくわよ。特別メニュー「昇天」。