ともだちと縁を切った

吉海こすず
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公開:2024/8/14

人生ではじめて友人と絶縁した。幼少期から他人に「絶交だからね」なんて言った覚えは一度もなかったのにだ。まあそういう巡り合わせだったのだろう。みずから関係を切りに行ったとはいえ、悲しい気持ちがある。とても尊敬できる、いろんなものを与えてくれた友人だったからだ。いろんな場面で助けてもらった。しかし過去の人になった。当人にとっては青天の霹靂だろう。血も涙もない、これ以上ない拒絶をおこなった。狭量かつ未熟で申し訳なかったと思う。なるべく他者には寛容でありたかったけれどうまくいかなかった。こと人間関係に関しては潔癖な自覚がある。他者と関わりあうということは、私にとって宝物のようなものだから。

私が知らないだけで、世間一般では恋愛というフィールドにおいては打算と騙し合いと資本主義的な価値判断がスタンダードなのかもしれない。それに拒絶反応を示していたらきりがないような気がする。だからといってそういった価値観を私はどうしても受け入れることができなかった。人間関係は信頼のみによって築かれていくものだとばかり考えていたし、そうでないものは本質的に悪徳であるとしか思えない。これ以上ない裏切り、冒涜、道徳の崩壊。あの人に私は友人として大切にされていたけれど、立場や状況が違えば、まるで棚に陳列された商品のように吟味されていたのかもしれないとほんのわずかでも感じさせる言動は、いままでの信頼が無に帰すのにじゅうぶんなものだった。

共通の友人には、「あなたは相手が最も傷つく方法をとった、それは意図的なものか」と問われた。むしろ、意地悪な気持ちは一ミリもないつもりで、必要な事項だけを淡々と説明しておしまいにしたのだが、それもそれで容赦がなかったといまになって考える。正直なところ、話し合いをこれ以上続ける余裕がなかったのもある。私は本気で友人たちを愛しているため、いちど「愛せない」と思ってしまった存在はもはや友人ではないと認識することになるらしい。自分でも気づかないレベルですこしずつ不信感が募っていったところに、信頼の根幹をゆるがす発言を浴びせかけられてしまったものだから、覆水盆に返らずという現象が起きてしまったのだと思う。こういうときの私はかたくなで、取りつく島もないような状態になってしまう。覚悟に近いのかもしれない。激烈な感情を理屈で補強し、説得する隙を与えない。こりゃだめだと思われたのかわからないが、説得もされなかったけれど。

いや〜〜〜しかし疲れた!!!! 私のことは死んだものだと思って生きていってほしい。勝手な言い分だけれどそう思う。別々の人間、別々の人生を歩んでいきましょう。それではごきげんよう。

@yoshiumintyu
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