ビジネス書のたぐいはこっ恥ずかしい気持ちになりながら読むタイプの人間であるが、とある人のおすすめを聞いておもしろそうだな、と思ったのでえいやと購入してみた。kindle万歳! Amazon最高! ページ数の多い本だったが物質としては1mgも増えずに書籍を手に入れられた。ひとことで言うと「変な男が変な本を魂かけて書いてる」という感想。私は変な人間が好きなので四角氏のことがだいぶ気に入ったらしい。もういますぐ実践したいこととしては、「段階的にすべてを軽くしていく」ということだ。財布の重さから始まり、服の重さ、所持データの重さ、スケジュールやタスク、最終的には「思考と習慣の軽量化」というところにたどり着く。後半は特にビジネスパーソンに向けて書かれたものだったので、いまの自分には参考にならないなと思う部分もかなりあったがおもしろく読めた。筆者の論拠は基本的に「実践で得たもの」であるので、悪く言えば根拠に乏しいと言わざるを得ない箇所もあるけれど、それ以上にリアリティをもって読者を納得させる力がとてつもなく強力だった。もちろん、客観的なデータで論拠を補強している部分も多くあった。しかし良くも悪くも「感覚的」な一冊であることにはまちがいない。どんな本でも著者と思想が合わないと読み進めづらい、ということが発生すると思うが、これは特にそういうことが起きそうだなという印象を受けた。とりあえず試し読み部分で判断してみるとよいと思う。
これを読む以前から、私はミニマリズム的思想におおよそ賛同していたので、とにかくものを減らそうと捨てに捨てまくっていた。しかし、「重さ」という観点からミニマリズムを捉えたことはなかったので、新鮮に響いた部分があった。とにかく「減らす」ことからとにかく「軽く」する、という考え方にシフトさせるだけでこれほど変わってくるのかと驚いた。重いものから手放していくのはたしかに合理的だ。効率もいい。効率のよさはミスを遠ざける。もともとアンチ資本主義であるため「効率」という観念に忌避感があったけれども、筆者は資本主義的価値観とはまた別の観点からそれの重要性を説いていたためすんなり受け入れられたように思う。じっさい、本文中でも資本主義や貨幣経済からの脱却についても言及している。非生産的、非効率的な時間がQOLを向上させるとも主張している。生産的な時間とそうでない時間のメリハリをつけることによって、豊かな生活が手に入るというのが四角氏のメゾットだ。
労働は(ほとんどの場合)避けられないことであって、でも自分はそれに適応できない気がする、だから死ぬしかないんじゃないかとまで追い詰められていた私にとって、本書は生きる道筋をほんの少し照らしてくれたように思う。まずは焦らずに、体調をととのえながら、やりたいことを着実に実行していければいいなあと思えたのでとてもいい読書ができました!!!!!! でも元気なさすぎるときに読むと「喰らう」かもしれないので気をつけてください。ひさびさに通しで一冊読めてとてもうれしい。続編があるようなのでそれも読みます。小説も読めたらもっといい。小説のレビューも書きたいな。それではみなさまごきげんよう。