トーマス・ベルンハルト・著、池田信雄・訳、河出書房新社・刊(2019年)。
英語版ウィキペディアによると、ベルンハルトはオーストリアの小説家、劇作家、詩人。彼は戦後ドイツ語圏における最も重要な作家のひとりであると、広くみなされている。『凍』は彼が1963年に出版した、彼にとって最初の小説だ。
お話は研修医である「ぼく」が、勤務先の病院の下級医に、下級医の弟である画家の様子を観察するよう依頼され、寒村へ赴くというもの。寒村での出来事が27日間にわたる「ぼく」の手記や書簡の形をとって描かれている。
訳者あとがきを含めると365ページの本で、読むのに約2週間かかった。
日本語訳で用いられる語彙が、私にとって難解で、日本語の大きな辞書のスマートフォン版をこのために買った。おかげでいくつか新しい表現を覚えることができた。
老画家の独白が圧倒的な分量で続く様子が、埴谷雄高の『死霊』を想起させた。私が10代の頃に読んだ『死霊』を読み返したくなった。なつかしくなったのだ。