前に刈ったのはいつだったか、髪がのびてきているのが非常に気になっていた。
しかし刈る気力がなかった。
椅子やテーブルをたたんで新聞紙を敷くのがおっくうだった。
きょう刈ることができて非常に気分がよい。
ケープをつけていると暑かった。
しかし頻繁にめがねをかけて合わせ鏡をし、刈り残しがないか入念に確かめた。
これまでで最も時間をかけて仕上げただろう。
もし、私が職場を去ることになったら就職活動をするだろう。
そのときもくりくり坊主でいられるだろうか。
メイクを一切せずにいられるだろうか。
髪を伸ばしてメイクをしないと採用されないだろうか。
私が雇用主だったとして、メイクをしていないくりくり坊主が面接に来ても落とさない。
そのことには一切触れない。
しかし私は雇用主ではなく求職者だ。
なんなのこの社会の慣習。
誰が得をするというの。
百歩譲ってくりくり坊主でもメイクは必要かもしれない。
色のついたてきとうなリップクリーム、ルースパウダー、アイブロウパウダー、アイカラーとマスカラをそこいらの薬屋で買えばいい。
3000円あれば揃うかな。
業腹だがしかたない。
でもいやだなあ。
私の予感は職を失うほうに動いている。
私を傷つけた人はふつうに給料をもらい、退職金までもらうだろう。
傷つけられた私は収入もないのに会社に社会保険料を納めつづけ、あげくのはてに部署異動もできずに会社を去るだろう。
不安でいっぱいだ。
どうして私が私のままでいては稼いでいけないのだろう。