ベルリンフィルは夏に屋外でイベントをやっていた。
今はどうかわからない。
かつてイタリアの曲ばかり演奏するイタリアンナイトというのをやっていてテレビでみた。
指揮者はアバドだった。
この話はあちこちに書いているのだが、アバドはブライアン・フェリーに顔がよく似ている。
ほんとうに似ているのだ。
それはいいとして、イタリアンナイトではウィリアム・テル序曲をやっていた。
その演奏がすばらしくて私はベルリンフィルとアバドがすっかり好きになった。
ああ、この曲ってこんな曲なんだなと思った。
それまで聴いていた演奏が平面図に描かれた人間の姿だとしたら、ベルリンフィルの演奏は生きたほんものの人間のようだった。
息をしていた。
何年も経ってからそのコンサートのDVDを買った。
観客はサッカーの試合をラジオで聴きながらコンサートを観ていて、ときどき静かな曲の途中でも歓声が上がった。
アバドは怒ったりせず、親指を立ててにっこりしていた。
オペラの曲をたくさんやって、アンジェラ・ゲオルギューが歌っていた。
ブリン・ターフェルも出ていた。
合唱の人たちが歌うのに合わせて金床を叩くユーモラスな曲もあった。
西洋音楽は西洋の音楽なのだなあと箸にも棒にもかからないことを感じる。
やはり野に置けレンゲソウ。
こうしてここで画面越しやイヤフォンで観たり聴いたりしていてもわからないことがあるだろう。
でも西洋の中にもイタリアがあり、ドイツやオーストリアがあり、フランスやイギリスがある。
北欧もある。