映画『ラストマイル』の感想記事です。(こちらのリンク先は公式HPです)
上映見て早三日、感想書いたら自分で見返せて楽しいな〜と気がついたので自分メモの書き散らかしです。
内容にも触れますので当然ながらネタバレ注意。
働くことの楽しさは、よりよい未来を目指せるところにあると思う。
自己紹介
関連作に相当する『アンナチュラル』、『MIU404』はともに視聴済み。
サブスクで作業BGMのように流しているのでアンナチュ20週弱/みうは多分10回くらい見てる。
桔梗隊長の「何を恐れているんだろうね。ただここにいて働いているだけなのに」っていうセリフが好き。
感想
お仕事をすることで生きる人たちが、お仕事に殺されないようにするため、「生きるためにお仕事をしている」と忘れないためのお話だなあとなんとなく思いました。
事前情報は「みうとアンナチュのキャストも出るらしい」くらいで、あらすじもよく知らずに行きました。思ったより出てた。彼女らは当たり前にあの世界で医者や警察官として生活していて、働いていた。そういうところが好きだなと思う。
社会問題を直視しながらエンタメ作品を作るってすごいことだと思う。アンナチュラルやMIU404のタイトルを掲げて宣伝したからにはこうでなくちゃ、と思わせる作品だった。
あと単純にドラマの中で起きるミステリ?サスペンス?的な空気がすっっっごい好き!! 後に残るメッセージも大切だけど、それってその場で「楽しい!!」って思わせて惹き込まれるのが大前提なのでもうもうもうこれは大満足 HAPPY
▽内容に関しての覚え書き
もう好き勝手書くぞ。パンフレットも買ってない・数日前に見た・一回しか見てないのうろ覚えパンチなので情報の正確さは保証しません。
え〜、お仕事と生きることと、精神を病むことに関する自己紹介から。
虚弱症と感覚過敏
体質が社会と折り合い悪くメンクリ通院12年くらい(山あり谷あり)
大学〜社会人1年目の間に何度か自死しかける(警察や救急沙汰になったのはたぶん3回/覚えてる限り)
ここ1年くらいは求職もせずに療養しています
最近はかなり元気
共通した世界観でのメッセージ
交わった作品のどれも、理不尽を許さず、絶対に死をエンディングだと捉えないんだよな〜と思います。
人を殺すこと。人が不自然に死ぬこと。それは不条理で、理不尽で、戦わなければならないことなのだとずっとずっと訴えかけていた。
『ラストマイル』は多分「目に見えない『理不尽』があっても、世界を止めない。理不尽という名の爆弾を探し続ける」っていう感じなのかな〜と思います。
今見た予告映像でも(今???)重要なのは、「止めませんよ、絶対。」らしいので。
ロッカーのメモ
作中でもベルトコンベアの速度って言ってたから、社畜くんはあのベルトコンベアを止めたかったんだな〜くらいの認識でした。
このメモで解釈の話が含まれることにびっくりした。
そうだよな、最後「次はあなたの番」って言ってるし、あのロッカーはエピローグでまた見つかった。解釈すべく残された謎の代物だったんだ〜、と思って。
「馬鹿なことをした」
自分が怪我したくらいで止まるものじゃなかった。死ねる高さでもなかった。
ベルトコンベアがもう一度動き出したから、死に損ねたからそう言ったんだな〜と思ってます。誰の営みも止められなかった。自分の営みさえも。
健康で冷静な頭で見ると「死に損ねた」って意味不明だなと思うけど、命と仕事が等価なことって本当にあった。
『ベルトコンベアを止める(≒自分が頑張らなくていい状況になる)』ために支払われる死という代償は、素朴で、大したものじゃないと思えるな〜と感じました。
あと、死のうと思った時って、怪我のこととかも本当になにも思いつかないんですよね。死のうと行動するって、「死ぬ」ってことだから。怪我とかリスクの計算なんて無意味だから。
暗すぎる話
出勤するか、死ぬか、みたいな状況って、本当にあった。
私は知ってる、明日出勤したくなくて、酒と睡眠薬をべらぼうに飲んで頭から血を流して病院で目が覚めた時も「明日出勤できるかなあ」って考えていたことを、私は知ってるからそう思う。
2.7m/s→0 70kg
ロッカーの内容を探しに行ってインターネットを彷徨って今改めて書き出したんですけど、70kgって作中どう説明されてたっけ。
思い出せないんだけど、70kgってベルトコンベアの耐荷重だったりするんですかね。ちょうど成人男性一人分くらいですね。
ちょうど、人間一人分の重みで「設計上は」止まるはずなんですよね。
「爆弾はまだ残ってる。次はあなたの番」
本物の爆弾を探して、注視しながら物流を絶やさないように仕事をまっとうしたエレナのセリフ。
この作品に込められたメッセージを考えた時にも言ったけど、「理不尽という名の爆弾を探し続ける」ってことなんだと私は解釈した。
爆弾って何
『爆弾』って、作中じゃ本物の爆弾があったけど、それは全部見つけたはずで。
このセリフの「爆弾」が指す概念は、ベルトコンベアを止めるために空を飛んだ社畜くんで、社畜くんを想ってデリファスに攻撃したテロの犯人なのだと思います。
「爆弾」を爆発させなかったエレナたちは雇用改善に繋げて、前より少しだけ、ほんの少しだけいい状態にしてまた世界を、ベルトコンベアを回したんですよ。
あの現場で働く全ての人が爆弾になりうるんだというメッセージを私は感じた。そんな爆弾の「スイッチ」を誰もが押さないために、(そう、社畜くんやテロの犯人は最初に、悲しい覚悟を持って、自分の死という理不尽を受け入れてしまった)
あなたの番
コウくんに言ったセリフだったと思うけど。カット演出の妙で劇場の視聴者に対しても真っ直ぐ伝えているセリフだと思う。
これって、「爆弾が爆発する前に見つけろ(世界を、止めないように)」ってことなのかな〜って思いました。まる。
世界、回ってる。
早々に荷物の検査機を導入したエレナの決定は正しかった。彼女はその発見をデリファスでポチった。その「ポチ」自体も、デリファスという企業や業者とか運送会社に支えられてる。回ってるな〜と思います。世界という社会が。
キャラクターで目を見張った描写
エレナとコウ
酸いも甘いも知っている今回の仕事人。そしてこれからの成長枠(九ちゃん、六郎、コウなのか……)。
エレナ「2年目、順調。3年目、眠れなくなった」。←これ、ごくごく自然に、『がんばる』『順調に行く』ことが努力の上で成り立っていることを思い出せるセリフでよかった。
コウは、元々平和な情報社会を作っていた人(ホワイトハッカー)。平和な情報社会を守ることも大事だったね。前職のこと、誇りに思ってほしい。
五十嵐
彼は「見逃した人」。あるいは、見つけたのに、放っておいた人だと思う。
人の怪我や命の大事さは理性でわかっていても、社畜くんが精神的に辛かったことがわかってても、止められなかった。エレナのように検査機を12台もポチれなかった。
システムの一部として、彼もベルトコンベアに流される社会の仕組みになって人を見殺しにできる人になってしまっていたのだと思う。ストを通してわかってくれたなら、いいなあとおもう。悔しがっていた描写もあった気がするし。
佐野親子
ずっと厳戒態勢だったデリファスと対比して、「順調に回る世界」の日常に近い面をたくさん説明してくれた親子だった。
世代ごとの価値観の違い、運送業の辛さ、中小メーカーの廃業なんかも描写していたのが印象的でした。
序盤の伏線、何かしらで回収してくれるだろうとは思ってたけどこの主役じゃない、過去作キャラでもない彼が仕事に誇りを持って『間に合わせた』のがものすごく涙腺にきた。
そうだよ。自分の仕事に誇りを持つって正しくて、楽しいことなんだよ、って。このドラマでたくさん描かれた辛いことばかりじゃなくて良いことも教えてくれて。それがものすごく救われた。
六郎
過去作の登場人物がただのファンサービスじゃないと強く感じた出演シーン。
デリファスが「医療も担ってる」点が書かれたのがものすごく重要だと思う。
この困っている一人の研修医にも悩みがあって、停滞していた過去があって、休学していたところ、「動き出した」エピソードがたっぷりアンナチュラルで描かれているから。医療という止められない社会インフラを担っているシーンが彼でよかった。
ミコト・中堂さん
「大した覚悟だな」「そんな覚悟いらないです」多分こんな感じのセリフだった。
中堂さんは思い余った選択を「しない」人で、三澄先生は思い余った選択で『理不尽にも』殺されかけた人だからこそそれぞれのセリフの意味がわかるのが妙で素敵だった。
骨太のバックストーリー持ってる。中堂さんがミコトの過去を知らないのも良い。
MIU404
伊吹の「きゅる」が感染って困惑してます。きゅるって可愛いよね。
404だから「間に合う」と思えたのがすごくよかった。404を知らずにあの親子を見られなかったかもしれない。知らない人どれだけ心臓縮こまるんだろう。興奮してあんまり記憶がないまである。
毛利さん
今回もすごく仕事していてよかった。相変わらず毛利さんだった。
アンナチュでも事故にしたいよ〜〜〜って思ってても捜査をきっちりやってるし、MIU404でも「当然」警察だから職責を全うする人。
お仕事ドラマ的には毛利さんのちょっとコミカルなんだけど警察官らしく厳格な部分がコントラストではっきり見えるのがとても良い味出す。
勝俣くん、白井くん
ありがとう、本当にありがとう。営んでいて、間に合って、本当によかった。
勝俣くん、足が早いから、多分向いてるよ。本当にありがとう。
内容外の日記
映画『ラストマイル』は2024年8月23日、金曜日の公開でした。
朝イチ上映に乗り込んだら、半分くらい埋まってた。人気すげ〜〜〜。
ほっこりするシーンでは空気が緩んだり、血気迫るシーンでは会場内が息を飲むような感がして楽しかったです。声とか出してないのに空気が変わるのが楽しい。みんなで映画見てる感じがしてね。
(直前に『KING OF PRISM -Dramatic PRISM.1-』の応援上映に行ったので、この感じ取った空気というのは僕の思い込みかもしれないが……。)
一人で劇場に行ったけど、みんなで映画見られてよかったです。楽しかった。