先日、会社の後輩2人(ともに20代)とスタジオでサウンドチェックをしていたときのこと。とある効果音を再生したところ、後輩の1人が「あれ、ノイズ乗ってますね、これ」と。もう1人の子も「あ、ほんとだ」。
「ちょっともう一回再生してみてくれる?」と言って改めて聞いてみたが、分からない。どこにノイズが乗ってるというのか。「え、全然ノイズなんて聞こえないんだけど…」「いや、ここですここ。プチっていってる」「うん、いってますね」「うそやん…」。
何度再生しても、全神経を耳に集中させて聞いてみても、分からない。判別できない。
「ごめん、分からないや…。スマンけど処理しておいてくれる?」と、後始末を後輩に託した。仕方ない。聞こえないものは処理しようがない。
人間の聴力は加齢とともに衰えていくという。順番として高音域から徐々に聞こえにくくなるので、40〜50代のうちは一般的な生活を送るにはさほど支障はないと言われている。が、我々のような仕事をしていると話は別だろう。今回のように微細なノイズが聞き分けられなくなる、つまりは音に対して正しいジャッジができなくなるというのは、結構ツラい。
そういえば、耳だけじゃなく「知識」や「技術」「感性」といった部分も、新しいトレンドをなかなか吸収できなくなってきている。理由はよくわからない。ハードウェアがダメなら、せめてソフトの部分だけでも…と思うんだけど、どうもマインドがついていかない。「老い」って、一体なんだろうね…。
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とはいえ自分自身はそこまで悲観してるわけじゃなく、結構呑気に考えていて。ノイズは聞き取れなくなってしまったけど、25年近く一緒に頑張ってきた自分の耳がちょっと愛おしいというか、まあ「仕方ないよね、歳だもん」と、そんな気持ちだったりもする。
しかしまあ、ノイズが判別できない私を見て、後輩の子がしみじみ放った一言「あ〜、やっぱこうなっちゃうんですね〜」は、なかなかの破壊力でしたよ…。