伊藤潤二の『うずまき』とメイドインアビス

yskaksk
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『メイドインアビス』は伊藤潤二の『うずまき』の影響を受けているというツイートを見た。

それでうずまきを読んでみたところ、メイドインアビスがこの作品の影響を受けている、ということはほとんど間違いないだろうという感想を持った。

いくつか上のツイートとも重複しているが、以下共通しているモチーフ

ワズキャンの抗えないスープとヒトマイマイ

メイドインアビスではアビスの呪いにより異形に変形する人々が出てくるが、うずまきでも人間が「ヒトマイマイ」という巨大なカタツムリに変形する(ヒトマイマイ以外にもいろいろ変形して異形になる)。ヒトマイマイが食料にされる点や肉が美味である点はワズキャンの抗えないスープと類似している。

時空の歪み

アビスでは深く潜るほど時間の進みがゆっくりになる。うずまきの舞台である黒渦町では逆に町の中心部で時間が早く進む事が示唆される(数日周辺を彷徨っていただけの主人公が中心部に戻ってきたとき、町の中では年単位の時間が経過している)

呪いによる髪の変形

アビスでは呪いにより髪が変形する。そのためライザやプルシュカの髪はカールしている。黒渦町では町の呪いにより、主人公の髪がカールする(うずまきになる)というエピソードがある。

深穴

うずまきでは物語の終盤になって、黒渦町にアビスにのような深い穴が出現する。深穴の底には遺跡がある。アビスの底にも遺跡に相当するもの(黄金郷)が存在することが示唆されている。

呪いの周期

黒渦町の呪いは周期的に強まり、人々を襲うことが明かされている。アビスでは詳細は明かされていないものの、2000年ごとに何かしらの厄災が起きることが、お祈りガイコツやボンドルドのセリフによって示唆されている。

特に深穴のモチーフや呪いの周期の設定はメイドインアビスのお話の根幹に関わってくる部分だろうと思う。

メイドインアビスの作者であるつくしあきひと(つくし卿)は、インタビューや対談などで、影響を受けた(もしくは参考にした)作品として小池一夫の本や『神々の山嶺』をよく挙げている。しかし、『うずまき』からの影響を明言したことは(多分)一度もない。

以下は推測になるが、つくし卿は元ネタを隠したいという気持ちがあるわけではないのだと思う。メイドインアビスのプロット全体をうずまきに強く依存する形で考えているために、うずまきからの影響を明言してしまうとネタバレになってしまうという事情があって、要するに読者への配慮として言えないのではないだろうか(メイドインアビスのネタバレが気になる人で、これから『うずまき』を読んでみようという人は注意したほうが良い)。

つくし卿は過去のインタビューで、「もともとメイドインアビスは仕掛け絵本のためのお話として構想した」「どんな仕掛けかを言うとネタバレになってしまう」という趣旨の発言もしている。

―― ここからは『メイドインアビス』という作品についてうかがいたいのですが、まずどこからこのような物語を着想されたんでしょう?

 1巻の巻末に少し書いたんですが、ちょっと変わった形の仕掛け絵本を同人誌として作ろうと思ってて。

―― 仕掛け、ですか?

 その仕掛けを言うと、完全にこの後の展開になるのですが、言っちゃっていいですか?

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1708/01/news123.html

うずまきのラストを読んだ上で、うずまきのラストと同じようなラストをメイドインアビスが迎えると仮定すると、どんな仕掛けかなんとなく想像がつくし、仕掛けがそのままこの後の展開になっているという意味でも、非常に納得のいく発言であると思う。